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//June 22//

【孝平】「じゃ、行こうか」

【桐葉】「ええ」

日曜日。

俺たちは二人そろって校門を出た。

制服ではなく、私服で。

……。

緊張する。

二人の間の微妙な距離。

手をつなぐ勇気も出ず、俺は歩き出した。

珠津島は観光資源が多く、マリンスポーツも盛んだ。

海岸通りは地元の人や観光客などで賑わっている。

海開きはまだだが、十分暑い。

こんな日に海に入れたら最高だろう。

一方、紅瀬さんはというと。

歩きながら、物珍しそうに周囲を見渡している。

【孝平】「なんか珍しいものでもあったか?」

そう尋ねると、紅瀬さんは我に返ったように俺を見た。

【桐葉】「何?」

【孝平】「どうかしたのかって聞いたんだ」

【桐葉】「別に」

【孝平】「まるで初めて街に来たみたいな顔してたぞ」

【桐葉】「いつもは人だけを見ていたから」

【桐葉】「街並みをじっくり眺めるのは、初めてかもしれないわ」

【孝平】「そっか」

【桐葉】「こうして見ると……ずいぶんにぎやかなのね」

紅瀬さんはまぶしそうに目を細めた。

もしかすると、記憶の中にある昔の光景と比べているのかもしれない。

百年前は、もちろんデパートもゲーセンもなかっただろうし。

【孝平】「そうだ、後でゲーセンでも寄っていこうか」

【桐葉】「げーせん……?」

【孝平】「……」

ひとまず携帯ショップに急ごう。

携帯ショップはすぐに見つかった。

店頭に最新機種がずらりと並んでいる。

【孝平】「どれがいい?」

【桐葉】「え……?」

カラフルな携帯たちを前に、紅瀬さんは途方に暮れていた。

【桐葉】「どれでもいいの?」

【孝平】「ああ」

【孝平】「今人気なのはここらへんじゃないかな」

TVチューナー搭載の薄型携帯を手渡した。

【孝平】「これならテレビも見られるし、テレビ電話だってできるぞ」

【桐葉】「?」

まるで生まれたてのハムスターに触れるような手つきだ。

この機種はちょっと敷居が高すぎるかもしれない。

【孝平】「じゃあこれは? 海外でも通話可能だってさ」

【桐葉】「??」

【孝平】「こっちは? なんと700万画素」

【桐葉】「???」

いかん。

固まってる。

【桐葉】「やっぱり、私には必要ないんじゃないかしら」

【孝平】「それを言っちゃおしまいだろ」

【孝平】「機能はとりあえずおいといて、まず見た目で選んでみようぜ」

【桐葉】「見た目……」

紅瀬さんは腕を組んだ。

……。

…………。

えらく長考している。

……。

…………。

かなりの慎重派だ。

やがて紅瀬さんは、奥に陳列してある携帯に目を向けた。

【桐葉】「これ」

【孝平】「え?」

【桐葉】「これにするわ」

それは、タダ同然の投げ売りコーナーにあった二世代前の携帯だった。

っていうか、俺のと同じだ。

【孝平】「ホントにこれでいいのか?」

【桐葉】「ええ」

【孝平】「画面も小さいし、解像度も低いぞ」

【桐葉】「メールはできるんでしょう?」

【孝平】「そりゃできるけどさ」

【桐葉】「だったら十分」

興味がなさそうに紅瀬さんは言う。

まあ、いいけど。

【孝平】「俺とおそろいだな」

【桐葉】「あらそう」

【孝平】「偶然かな?」

【桐葉】「でしょうね」

まったく素直じゃない。

【孝平】「ちなみに、黒と白どっちがいい?」

【桐葉】「黒」

【孝平】「すごい偶然だな。俺のも黒だ」

【桐葉】「そう」

【孝平】「白の方が女の子に人気みたいだぞ?」

【桐葉】「黒」

なんだかな。

まあ、偶然ということにしといてやるか。

契約の手続き完了後、無事紅瀬さんの手元に携帯がやってきた。

歩きながら、紅瀬さんは手提げ袋の中をちらちらと覗いている。

実はちょっと気になっているらしい。

【孝平】「喉渇かないか?」

【孝平】「そこらへんのカフェにでも入ってみるか」

【桐葉】「カフェ」

紅瀬さんは、確認するようにリピートする。

【孝平】「喫茶店とも言うけど」

【桐葉】「わかってるわ」

【孝平】「じゃ、決まり」

それから俺たちは、海浜公園内のオープンカフェに入った。

こじゃれた感じの、女の子が喜びそうな店だ。

席に着くと、紅瀬さんはやはり珍しそうに店内を眺めている。

【孝平】「何頼む? いろいろあるぞ」

【孝平】「エスプレッソとか、キャラメルマキアートとか」

【桐葉】「こんなにたくさんの種類があるの?」

【孝平】「みたいだな」

とは言いつつ、俺もよくわからない。

「スムージー」とか「フラペチーノ」とか言われてもな。

【桐葉】「じゃあ……」

……。

…………。

【桐葉】「コーヒーで」

【孝平】「普通だ」

【桐葉】「だってわからないのよ」

【桐葉】「こんなお店、入ったことないもの」

紅瀬さんは少しだけ申し訳なさそうに言う。

【桐葉】「誰かと街で買い物をするのも初めてだったわ」

【桐葉】「もちろん、こうやって向かい合ってお茶を飲むのも」

【孝平】「……そうか」

俺は、これまで紅瀬さんが歩いてきた道のりを思った。

主との鬼ごっこだけに費やされた日々。

それ以外のものは、すべて切り捨ててきたのだろう。

いや、本人が必要としなかったのだ。きっと。

【桐葉】「……やっぱり、こっちにするわ」

そう言って、紅瀬さんはメニューの写真を指さした。

「豆乳アズキカプチーノ仕立て」と書いてある。

【孝平】「なんだこりゃ?」

【桐葉】「さっぱりわからないわ」

【孝平】「わからないのに頼むのか」

【桐葉】「ええ」

【桐葉】「でも、普通じゃつまらないでしょう」

紅瀬さんは決意したようにうなずいた。

【孝平】「冒険、というやつか」

【桐葉】「そう」

【桐葉】「大冒険よ」

【孝平】「なるほど」

【孝平】「じゃあ俺はこれにしよう」

その隣の写真を指さした。

「トロピカル黒糖ラテ」と書いてある。

【桐葉】「何それ?」

【孝平】「わからん」

【桐葉】「大冒険ね」

【孝平】「だろ?」

【孝平】「しかも、バニラシロップもトッピングするつもりだ」

【桐葉】「……っ」

【桐葉】「では、私はアーモンドシロップをトッピングするわ」

【桐葉】「あとタピオカも」

どんだけカオスだよ。

数分後。

【店員A】「えー、豆乳アズキカプチーノ仕立て……」

【店員A】「アーモンドシロップタピオカトッピングラージサイズのお客様」

【桐葉】「はい」

どーん! と豆乳アズキなんちゃらがテーブルに置かれる。

でかい。さすがラージサイズ。

【桐葉】「これは何かしら」

【孝平】「俺に言われてもな」

紅瀬さんはそのブツを前に、かなり動揺しているようだ。

ドリンク一つで、ここまで盛り上がれるのもある意味すごい。

【孝平】「まあ、飲んでみなよ」

【桐葉】「……いただきます」

恐る恐るといった様子で、一口飲む。

【桐葉】「……」

【桐葉】「甘くておいしいわ」

【孝平】「そりゃよかった」

味覚が弱いはずの紅瀬さんが、おいしいと言ってくれた。

その気持ちだけで、嬉しかった。

【孝平】「いただきまーす」

俺もトロピカルなんちゃらを飲んでみる。

意外なことに、なかなか悪くない。

冒険してみるもんだ。

【孝平】「風が気持ちいいな」

テラスから海を眺めた。

日差しは強いが、ときおり吹く潮風が爽やかさを運んでくれる。

【孝平】「じゃ、さっそくだけどメールを送る練習してみようか」

【桐葉】「……」

露骨に嫌そうだ。

【孝平】「今、だりーなって思っただろ」

【桐葉】「思ってないわ」

【桐葉】「ちょっと面倒だとは思ったけど」

【孝平】「同じことだろ、それ」

【孝平】「なんで運動や数学はできるのに、機械関係は駄目なんだよ」

【桐葉】「駄目ではないわ」

【桐葉】「ちょっと苦手なだけ」

ちょっとどころじゃないだろ、と思う。

紅瀬さんはしぶしぶといった様子で、手提げ袋から携帯を取り出した。

【桐葉】「はい」

俺に手渡す。

【桐葉】「貴方の番号入れて」

【孝平】「おう」

メモリーの1番が俺になるのか。

ちょっと嬉しかったり。

【孝平】「……おっけ。他は?」

【桐葉】「他?」

【孝平】「他にもあるだろ、登録したい番号が」

【桐葉】「ないわ」

【孝平】「ないって、一件もないのか?」

【桐葉】「ええ」

【桐葉】「他は必要ないもの」

ドキリとした。

計算づくなのか、そうでないのか。

後者な分だけ、罪作りな人だと思う。

かなり付け焼き刃なメール講座を終え、カフェを出た。

特に行く当てもなく、ぶらぶらと街を歩く。

さて、どこに行こう。

ゲーセン、ボウリング、カラオケ、映画。

見せたいものや、一緒に楽しみたいものはたくさんある。

でも。

こうして歩いているだけでも、けっこう楽しいもんだ。

【孝平】「疲れてないか?」

【桐葉】「いいえ」

【孝平】「どっか行きたいところは?」

【桐葉】「……」

【桐葉】「ここでちょっと待ってて」

【孝平】「え?」

返事を待つでもなく、紅瀬さんは小走りに行ってしまう。

トイレか?

……。

…………。

なかなか戻ってこない。

だんだん心配になってきた。

ぴりりりっぴりりりっ

ポケットの中で携帯が鳴る。

ディスプレイには「紅瀬桐葉」と表示されていた。

【孝平】「もしもし」

【桐葉】「……っ」

【孝平】「もしもーし?」

【桐葉】「……あ」

【孝平】「紅瀬さん? もしもし?」

【桐葉】「も、もしもし」

【桐葉】「……通じた」

聞こえてるし。

【孝平】「今、どこにいるんだ?」

プツッ

【孝平】「いきなりガチャ切りかよっ」

わけがわからない。

その後、すぐに紅瀬さんが戻ってきた。

【桐葉】「お待たせ」

【孝平】「お帰り」

【孝平】「今のイタ電はなんだったんだ?」

【桐葉】「実験よ」

【桐葉】「結構離れてても通じるのね」

【孝平】「そりゃそうだ」

【孝平】「糸電話の時代からずいぶん進歩しただろ?」

【桐葉】「ええ、驚いたわ」

【桐葉】「もう糸が切れる心配をしなくていいのね」

【孝平】「ほんとに糸電話使ってたのかよ!?」

【桐葉】「そんなわけないでしょう」

冗談だったらしい。

【桐葉】「でもこれ、便利ね」

【孝平】「ようやくわかってくれたか」

【孝平】「俺の声が聞きたい時は、いつでも電話してくれ」

【桐葉】「……っ」

じわじわと耳が赤くなっているのがわかる。

それを悟られたくないのか、俺に背中を向けてしまった。

【孝平】「駄目か?」

【桐葉】「駄目よ」

【孝平】「どうして?」

【桐葉】「……」

【桐葉】「言わないわ」

【孝平】「言わないとたいへんなことが起こるぞ?」

【桐葉】「たいへんなことって?」

【孝平】「こういうの」

ぎゅっ。

無防備なその右手を、しっかりと捕まえた。

【桐葉】「!」

【孝平】「な?」

【桐葉】「……」

手をつないだまま、街を歩く。

とても誇らしい気持ちだった。

同時にとても恥ずかしくて、離れがたくて。

同じ場所を何度も歩いたりして。

時間は刻々と過ぎていった。

【孝平】「なんだかんだで、けっこうな時間になっちゃったな」

【桐葉】「……そうね」

あっという間に過ぎた一日。

またこの場所に戻ってきてしまった。

俺たちは、手をつないだまま校門を見上げる。

この校門をくぐったら、もうデートは終わり。

……寂しい。

また明日会えるのに、今日が終わってしまうのがたまらなく寂しい。

【孝平】「そろそろ帰らないとな」

【桐葉】「ええ」

なのに、紅瀬さんは手を放さない。

ずっと同じ力で、俺の手を握り返している。

紅瀬さんも、帰りたくないのだろうか。

俺と同じ気持ちでいてくれたら嬉しいけど。

【孝平】「……」

【桐葉】「……」

見つめ合う。

抱きしめたいな、と思う。

でも今抱きしめたら、もっと帰したくなくなってしまう。

シスター天池に目をつけられるような行動は、避けなくては。

【孝平】「じゃ、行こうか」

【桐葉】「……っ」

一歩踏み出した俺を、紅瀬さんの手が引き留めた。

ような気がした。

【孝平】「紅瀬さん?」

【桐葉】「……帰りましょう」

手が、離れた。

紅瀬さんは校門をくぐり、歩いていく。

俺はしばらく、その凜とした綺麗な背中を見送っていた。

その夜。

俺はベッドに横たわりながら、携帯をいじっていた。

紅瀬桐葉。

俺の携帯のメモリーに、新たな名前が加わった。

着信履歴を見てニヤニヤしてる俺は、傍から見るとかなり危ないかもしれない。

【孝平】「さて、どうするか……」

こんな時間に電話したら、迷惑だろうか。

それとも、もう寝てるかもしれない。

「さっき別れたばかりなのに、しつこい」と思われるのも嫌だ。

ここは無難に、メールにしておくか。

俺はさっそくメールボックスを開いた。

……。

『今日は楽しかった』

『また一緒に出かけよう』

『今度は激辛ラーメンを食べに行こうぜ』

『じゃ、また明日』

【孝平】「送信、と」

我ながら芸のないメールだ。

まあ最初はこんなもんだろう。

返事をくれるだろうか?

一応、メールの読み方は教えたはずなのだが。

……。

ぴりりりっぴりりりっ

【孝平】「おわっ」

手の中で鳴り響く着信音。

メール受信画面ではなく、電話番号が表示されている。

紅瀬さんからだった。

【孝平】「もしもし?」

【桐葉】「もしもし」

【孝平】「どうした?」

【桐葉】「食べるわ」

【孝平】「……はい?」

【桐葉】「激辛ラーメン、食べに行くわ」

……。

【孝平】「なあ」

【桐葉】「何?」

【孝平】「なぜそれをメールで返信しない?」

【桐葉】「だって」

【桐葉】「電話の方が早いでしょう」

まあ、そりゃそうなんだけど。

メールの返事はメールでしなきゃいけない決まりもないのだが。

【孝平】「せっかくなんだから、メールで返してみようぜ」

【桐葉】「……」

【孝平】「嫌か」

【桐葉】「嫌ではないけど」

【孝平】「素直に面倒だと言え」

【桐葉】「違うわ」

【桐葉】「ボタンがいっぱいあって、よくわからないのよ」

潔く認めたな。

さっきの教え方じゃ、ちょっとわかりづらかったかもしれない。

【孝平】「じゃあもう一回教えてやる」

【孝平】「なんて打とうとしたんだ?」

【桐葉】「……」

【孝平】「もしもし?」

【桐葉】「……あ」

【孝平】「あ?」

【孝平】「最初が『あ』でいいのか?」

【桐葉】「そう」

【孝平】「次は?」

【桐葉】「……っ」

【孝平】「もしもーし? 電波悪いのかな」

【桐葉】「……い」

【孝平】「『い』でいいんだな? 次は?」

【桐葉】「た」

【孝平】「『た』」

【桐葉】「……い」

【孝平】「……」

あいたい

俺の幻聴でなければ、確かに彼女はそう言った。

その言葉をもう一度噛みしめた時、身体の奥が熱くなるのがわかった。

【孝平】「なあ」

【桐葉】「……何?」

【孝平】「今の言葉、口に出して言ってみてくれないか?」

【桐葉】「む、無理よ」

【孝平】「そこをなんとか」

【桐葉】「駄目」

【孝平】「わかった。じゃあいい」

【桐葉】「?」

【孝平】「俺が代わりに言う」

【孝平】「会いたい」

会いたい。

紅瀬さんに、会いたい。

俺は携帯を握りしめたまま、部屋を飛び出していた。

薄暗い廊下を走る。

なるべく音を立てないように。

誰にも気づかれないように。

それでも、足が急いてしまうのを抑えられない。

【孝平】「はぁ、はぁ……」

走って、ひたすら走って。

ようやく俺は、廊下の突き当たりにある扉に辿り着いた。

【孝平】「はぁ……着い……た」

のはいいものの。

俺は馬鹿だ。

こんなところまで来てどうするんだ。

男子フロアから女子フロアには移動できないんだ。

今の今まで、そんなことすっかり忘れていた。

……。

いや、それ以前に。

女子フロアに移動できたとして、どうする気だった?

こんな真夜中に忍び込んだら、ただの変質者だ。

風紀シール10枚では済まされないだろう。

どっと冷や汗が出る。

【孝平】「馬鹿だ……」

そうつぶやいた時。

目の前の扉が──

ガチャッ

──ゆっくりと、開いた。

【孝平】「あ……」

扉の向こうにいたのは、紅瀬さんだった。

薄闇の中で俺を見つめている。

【孝平】「どう……して?」

【桐葉】「……会いたい」

【桐葉】「貴方がそう言ったから」

恥ずかしそうに目を伏せた。

【桐葉】「そちらからでは、扉は開かないわ」

【孝平】「だから開けに来てくれたのか」

【桐葉】「……」

紅瀬さんは頬を赤らめたまま、小さくうなずいた。

さまざまな思いがこみ上げてきて、全身が熱くなる。

俺は無我夢中で、紅瀬さんを抱きしめた。

【桐葉】「あ……」

か細い声が耳元で聞こえた。

どうしてもっと早く、こうしなかったんだろう。

手をつないで嬉しかった。

でも、それだけじゃ満足できなかった。

俺はずっと、紅瀬さんをこの腕の中に閉じこめたかったんだ。

力ずくでも。

【孝平】「紅瀬さん……っ」

【桐葉】「……駄目よ」

【桐葉】「誰かに見られるわ」

【孝平】「だったら、俺を突き放せよ」

【桐葉】「……っ」

紅瀬さんの腕が、俺の背中に絡まる。

離れられない。

俺たちは今、同じ気持ちでいる。

これだけは本当だ。

ぱた……ぱた……

【孝平】「!」

【桐葉】「!」

背後から物音がして、驚きのあまり飛び上がった。

足音だ。

男子フロアから見回りがやって来たのだ。

やばい。

絶対やばい。

こんなところを寮監に見られたら……。

【桐葉】「……こっちに来て」

【孝平】「え?」

【桐葉】「早く」

紅瀬さんは俺の腕を引っ張り、フロアを遮る扉を静かに閉めた。

ガチャッ

【孝平】「はぁ……はぁ……」

見回りから逃げ、辿り着いたのは紅瀬さんの部屋だった。

とっさのこととはいえ、こんなところに逃げ込んでしまった。

【孝平】「紅瀬さん」

【桐葉】「……静かに」

紅瀬さんは人差し指を唇にあてた。

ドアの鍵をゆっくりと締めてから、俺の横を通り過ぎようとする。

その腕を握り、引き留めた。

【孝平】「紅瀬さん」

もう一度、名前を呼んだ。

その黒く潤んだ瞳が俺を見上げる。

細い腕が、ほのかな熱をたたえていた。

【桐葉】「……見ないで」

【孝平】「どうして?」

【桐葉】「どうしてもよ」

【孝平】「それじゃわからない」

【桐葉】「駄目なの」

【桐葉】「これ以上は、私」

【桐葉】「んっ……」

言葉を遮るように、唇をふさぐ。

緊張していた彼女の腕が、とたんに力を失った。

膝がガクンと落ちるのを、寸前で抱き留める。

【桐葉】「んぅ……んっ」

紅瀬さんの唇は、とろけるように熱かった。

しっとりとした、艶やかな感触。

それを味わうようにして舌を這わせる。

【桐葉】「はぁ……ん……っ」

甘い唾液。

つるりとした歯茎の裏。

臆病だった彼女の舌が、少しずつ俺に応えていく。

ふわりと漂うジャスミンの香り。

この香りが、俺の思考回路を乱していく。

【桐葉】「……んくっ……あ」

唾液を絡めるようにして舌を愛撫すると、紅瀬さんは俺にしがみついてきた。

【桐葉】「あふ……ぁ」

【桐葉】「だから……駄目だと言ったのよ」

【孝平】「どうして?」

【桐葉】「もう、自分を止める自信がないわ」

俺なんか、とっくにそんな自信をなくしてる。

好きの気持ちが溢れすぎて、どうすることもできない。

ただただ、紅瀬さんを求めることしか。

【孝平】「紅瀬さん、好きだ」

その二の腕に指を這わせた。

【桐葉】「はぁっ……」

すべすべとした、真珠の光を放つ肌。

手のひらに吸いつくような感触に、身体の芯が震えた。

もう何も考えられない。

【孝平】「紅瀬さん……」

俺たちは唇を重ねながら、ベッドに倒れ込んだ。

//H-scene starts//

【桐葉】「あ……っ」

その猫のような妖しいまなざしが、俺を射すくめる。

なんて淫靡な表情を浮かべるんだろう。

あの凍てついた瞳は、いつのまに氷解してしまったのか。

彼女を組み敷く俺は、とてつもない罪を犯しているみたいだ。

俺は手を伸ばし、その鎖骨に触れた。

【桐葉】「ふぅ……うっ」

ぴくん、と肩が跳ねる。

そのまなざしに、少しだけ警戒心が戻った。

本当に、猫のようだと思う。

高貴な彼女を手なずけることなんて、きっとできないのだろう。

【桐葉】「あ……はぁっ……」

鎖骨から、ゆっくりと指を下ろしていく。

襟元から見える、なめらかな胸の谷間。

ボタンとボタンの隙間からは、薄紫色のブラが覗いている。

とても豊かな乳房だ。

その右側のふくらみを、手のひらでそっと包んだ。

【桐葉】「んっ……!」

【孝平】「うわ……」

柔らかくて、温かい。

ちょっと押しただけで、その若い弾力を感じることができる。

【孝平】「紅瀬さん、俺を見て」

【桐葉】「……っ」

恥ずかしくて、目を合わせることができないらしい。

【孝平】「紅瀬さん」

優しく囁きながら、乳房を揉み上げる。

【桐葉】「はぁっ……ぁ、駄目……」

まばたきをしてから、その瞳が俺をとらえた。

ほのかに上気した頬。

幼い少女のような、愛らしい表情だった。

こんな素直な表情を、今までずっと隠してきたのか。

【孝平】「ドキドキしてる?」

【桐葉】「……すごく」

【孝平】「俺も」

そう言うと、紅瀬さんは少しだけ微笑んだ。

すべてを肯定されたような笑みだった。

【桐葉】「あ……はぁ、んっ」

ぷちんっ

ブラウスのボタンを一つ、また一つ外していった。

【桐葉】「あぁっ……!」

すべてのボタンを外し終えると、ブラに包まれた二つの乳房がこぼれ落ちた。

シンプルな薄紫のブラだ。

ぷるぷるとした大きな双球を、窮屈そうに支えている。

【孝平】「紅瀬さんの胸、ほんとに大きいんだな」

【桐葉】「なっ」

真っ赤になった。

【孝平】「すべすべで、白くて、すごく綺麗だ」

今度はブラの上から、乳房をたっぷりとつかむ。

指が吸い込まれてしまいそうだ。

紅瀬さん、すごくドキドキしてる。

【桐葉】「ま、待って」

【孝平】「うん、待ってる」

なめらかな胸の質感を、手のひら全体で味わった。

【桐葉】「それ以上は、本当に……」

【桐葉】「自分がどうなるか……わからないの」

【孝平】「そういう紅瀬さんも見てみたい」

【桐葉】「……駄目よ」

【孝平】「駄目じゃない」

【桐葉】「駄目……私、普通じゃないの」

【桐葉】「普通じゃないくらい……」

【桐葉】「感じているのよ……」

甘やかな吐息が俺の耳元に絡みつく。

ゾクゾクとした快感が、背中を駆け抜けていく。

乳房を優しく揉みながら、下腹部へと手を下ろし、ズボンのボタンを外した。

その身体にわずかな緊張が走ったが、またすぐに力が抜ける。

【孝平】「……腰、少しだけ浮かして」

【桐葉】「……ぅ」

耳元に温かい息を吐きかけると、紅瀬さんは逃れるようにして首をすくめた。

その隙を狙って、ズボンをグッと引き下げる。

【桐葉】「あ……んっ」

紅瀬さんは恥ずかしそうに目を閉じた。

シンプルなレースが施された、ブラとお揃いの薄紫ショーツ。

そのしなやかなお尻に、ぴったりとフィットしている。

【桐葉】「お願い」

【桐葉】「その、電気を……」

【孝平】「駄目」

【桐葉】「ぇ……っ」

子供みたいな困った顔

普段とはまるで違う反応に、なぜか興奮してしまう。

あのそっけなさは、いったいどこにいってしまったのか。

【孝平】「明るいところで、紅瀬さんのすべてを見たい」

【桐葉】「……嫌」

【孝平】「嫌って言われてもな」

【桐葉】「嫌よ」

【桐葉】「貴方に、見せられるようなものではないわ」

【孝平】「そんなの見てからじゃなきゃわからない」

【孝平】「だろ?」

【桐葉】「ぅ……っ」

【桐葉】「それは屁理屈というものだわ」

一瞬だけ、いつもの紅瀬さん節が戻った。

だが、そのふくらみを撫でているうちに、すぐ覇気を失ってしまう。

【桐葉】「んっ……ふぅ……」

吐息で濡れた唇。

俺を誘うかのように、なまめかしく輝いている。

【孝平】「すげー綺麗だ……」

俺はブラに手をかけ、一気にたくし上げた。

【桐葉】「やっ」

窮屈だった布から解き放たれた乳房が、ぷるんとあらわになる。

思わず息を呑んだ。

ボリュームはあるのに、トップの位置は高い。

ハリのある双丘の上には、薄ピンクの小さな乳首が備わっていた。

成熟した芳香と、みずみずしい輝きをまとっている。

【桐葉】「あ……だ、駄目……」

恥ずかしそうに顔をそむける。

どんなしぐさも愛らしくてたまらない。

俺はその豊かな乳房を、手で持ち上げるようにして包んだ。

【桐葉】「ふぅっ、んんっ」

すごい重量感だ。

もちもちとした感触が心地いい。

愛撫を続けていると、少しずつ乳首がふくらんでくる。

その先端を、人差し指と中指で挟んでみた。

【桐葉】「あぁっ……! はあぁっ」

声がひときわ高くなる。

【孝平】「もう硬くなってるな」

【桐葉】「は、恥ずかしいことを言わないで」

【孝平】「恥ずかしいんだ?」

【桐葉】「……っ」

こくり。

素直にうなずいた。

くそっ、なんてかわいい人なんだ。

指を動かし、乳首に刺激を与えていく。

突起が薄ピンクからコーラルピンクへと赤みを増していった。

【桐葉】「やぁ……ふぁっ、はうっ」

苦悶を浮かべるその表情が、なんともなまめかしい。

こんなことをされると、さすがにクールフェイスを保つのは難しそうだ。

俺は十分に硬くなったそれに、しゃぶりついた。

【桐葉】「やぁっ、あっ、ああぁっ」

唾液を絡めた舌で、乳首全体を湿らせていく。

肌から立ち上る甘い匂い。

ほんのりと汗の味が舌に乗った。

【孝平】「ちゅっ……ちゅぅっ、ちゅぷっ」

【桐葉】「んくっ、くぅ、だめぇっ」

紅瀬さんの息づかいが荒くなる。

乳首に吸いつきながら、もう片方の乳房を強く揉みしだいた。

熱を持った素肌は、しっとりと濡れている。

ぷにぷにと弄ぶようにいじると、紅瀬さんは小さく首を振った。

【孝平】「……どうしたんだ?」

【桐葉】「な……なんでもないわ」

【孝平】「でも、顔が赤い」

【桐葉】「んっ、はあぁっ……!」

舌で乳首を小刻みについばみながら、薄紫色のショーツに手を伸ばした。

大事な部分を覆っていた、小さな布地。

その最後の砦が取り払われると、うっすらとした茂みが見えた。

【桐葉】「やぁ、あ……そこは……」

蛍光灯の下、陰部が明るみに出る。

もっとよく見えるよう、脚をさらに高く掲げた。

【桐葉】「くっ……!」

まるではちみつを塗ったかのように艶めく、紅瀬さんの大切な秘部。

鮮やかな桃色のヒダは、左右対称の綺麗な形をしていた。

無言のまま、その造形をじっくりと眺める。

丸みのあるお尻は、羞恥に堪え忍ぶように小さく震えている。

【桐葉】「そんな風に、その、じろじろと見るものではないわ」

【孝平】「うん」

【桐葉】「き、聞いてるの?」

【孝平】「聞いてる」

ぬるっ

縦スジに沿わせるように、人差し指をあてがう。

【桐葉】「はうぅ……っ!」

人肌に温まった蜜が、指にまとわりつく。

肉ヒダがひくひくと震えていた。

ここが紅瀬さんの、一番恥ずかしい部分。

達成感にも似た感動がわき上がる。

【孝平】「ぬるぬるしてる。それに、すごく熱い」

【桐葉】「だめ、だめなの……あぁ、ふうぅっ」

ぬちゅっ、ぴちゃ……ぺちゃっ

指を前後に動かしていると、奥から蜜がさらに溢れてきた。

【孝平】「わ、すご……」

俺の動きに応えるかのように、陰部が潤う。

甘さの中に、わずかに酸味のある匂いが鼻腔を漂った。

たぶん、紅瀬さんは感じてるんだと思う。

でなきゃ、こんなに濡れるはずがない。

【孝平】「ここ、気持ちいいか?」

【桐葉】「……っ」

【桐葉】「女は、そんなことを口にしないものなの」

どうやら古風な考え方の持ち主らしい。

でも、そんなこと言われると、余計言わせてみたくなる。

俺はさらに指の動きを速めた。

【桐葉】「ひぁ、あぁっ、ああっー……!」

【孝平】「これでも言いたくない?」

【桐葉】「ひ、ひどいわ……」

ちょっとだけ泣きそうな顔になった。

いじめすぎたかもしれない。

ぬぷぷっ

膣口に、指の第一関節まで沈めてみた。

【桐葉】「あぅ、あぁっ」

【孝平】「熱い……」

とろとろに蕩けた肉壺が、俺の指に吸いついた。

【桐葉】「は、入って……る」

信じられないことのように、紅瀬さんはつぶやく。

太腿とお尻は、流れ出た愛液でてらてらと光っている。

人差し指を沈めながら、親指で充血した突起に触れた。

プラム色に染まった、小豆大のかわいいクリトリスだった。

【桐葉】「ひぅ、あん、あ、脚が……」

【桐葉】「ふ、震えて……っ」

全身を制御できないらしく、紅瀬さんはすがるような目で俺を見る。

まるで猫が主人を見上げているような目だ。

【桐葉】「ひぁ、あふぅ、あぁ、中が……あぁっ」

とても狭い内部は、俺の指を締めつけて放さない。

つやを帯びたクリトリスは、親指を押し返すかのように勃起している。

差し込んだ指を少しだけ回転させると、陰部全体がヒクヒクと反応した。

【孝平】「紅瀬さん、感じてる」

【桐葉】「んっ……」

【孝平】「俺の指で、こんなに濡らして……」

俺のトランクスの中では、すでにペニスが破裂しそうだ。

これ以上我慢できるかどうか、自信はない。

落ち着け。

俺は奥歯を噛みしめた。

快楽に飲み込まれ、我を忘れてしまわないように。

【桐葉】「あ……動いて……る……あくっ、くふぅ」

【孝平】「うっ……」

きゅう、と膣が強く指を締めつけた。

それだけで意識を失ってしまいそうだ。

俺は半ば無意識のうちに、ズボンのベルトを外しにかかっていた。

紅瀬さんと一つになりたい。

一番深いところでつながりたかった。

【桐葉】「あ……」

トランクスからペニスを取り出すと、紅瀬さんは目を丸くした。

【桐葉】「そ、それは……?」

【孝平】「それはと言われても……」

見たままの通りだ。

勃起しすぎて恥ずかしい。

【桐葉】「あの……」

【桐葉】「それを、どうする予定なの?」

どうする予定、ときた。

【孝平】「入れたい、と思う」

【孝平】「実は、もう我慢できないところまで来てるんだ」

正直に言った。

すると紅瀬さんは、呆然とした顔で、

【桐葉】「……そう」

と言った。

これは肯定と取っていいんだろうか?

ていうか、取る。

俺はペニスを手に取り、紅瀬さんの陰部にそっと先端を押し当てた。

【桐葉】「えっ……!?」

驚愕の顔。

現状をよく理解できていないのかもしれない。

【孝平】「……嫌か?」

【桐葉】「そ、そうではないけど」

【桐葉】「びっくりして、その……」

【桐葉】「あぁっ……はあぁっ!」

ゆっくりとペニスを挿入していく。

膣口は十分に濡れているが、かなり狭い。

紅瀬さんの全身にも、かなり力が入っている。

【孝平】「ゆっくり息を吐いて」

【孝平】「俺を見るんだ」

【桐葉】「んっ……あぅっ……ああぅ」

眉間に皺が寄る。

必死に痛みをこらえているのだ。

【孝平】「つらいか?」

紅瀬さんはうなずいた。

【桐葉】「でも……いいのよ」

【桐葉】「貴方と、乗り越えたいの……」

【桐葉】「貴方と……っ」

【孝平】「……紅瀬さんっ」

さらに腰を押し進める。

硬い壁のような何かが立ちはだかった。

この先に進むのは、なかなか困難だ。

【桐葉】「あぁっ……奥に、来て……っ」

懇願するように言う。

俺のために我慢してくれているんだ。

ここで諦めるわけにはいかない。

【孝平】「あと少しだから」

もう少し。

あと少し……。

【桐葉】「いっ……あぁ、くっはあぁっ」

ミリミリとペニスが柔肉に食い込んでいく。

ひたすら狭いが、前進している手応えはあった。

【桐葉】「はあぁっ、ああぁーっ……!」

やがてペニスの根元までが、すっぽりと紅瀬さんの中に収まる。

1ミリの隙もない一体感だった。

【孝平】「紅瀬さん、入ったよ」

【桐葉】「う……」

何度も何度もうなずいた。

痛すぎて声が出ないのかもしれない。

【孝平】「……ありがとう」

【孝平】「俺、今、すっげー嬉しい」

【桐葉】「わ、私も……」

【桐葉】「こんなに近く、貴方のことを感じられて……」

そのアーモンド型の瞳が、濡れたように光る。

涙?

【孝平】「……かわいい」

意外と涙もろいタチなのかもしれない。

【桐葉】「……からかわないで」

【孝平】「本心を言っただけだ」

【桐葉】「くっ……」

【桐葉】「私にこんな格好させるなんて……ひどい人ね」

【孝平】「大丈夫」

【孝平】「俺しか見てないから」

【桐葉】「……当たり前よ」

【桐葉】「他の人に見られたら、舌を噛むわ」

俺だけにしか見せない表情と、俺にしか見せない場所。

この気持ちを、優越感と呼ぶのだろうか?

【桐葉】「……動いても、いいのよ」

【桐葉】「私はもう、大丈夫だから」

きっと大丈夫ではないだろうに。

でも、そう言ってくれる紅瀬さんの気持ちが嬉しかった。

【孝平】「少しだけ、動くぞ」

ペニスを半分くらいまで引き抜き、再び沈めていく。

【桐葉】「くっ……くはぁ、はああぁ」

……やばい。

ぬるぬるした感触と締めつけが、ペニスを大いに刺激する。

こんなに気持ちいいなんてずるい。

【孝平】「う……くっ」

【桐葉】「はぁ、はぁっ……あぁっ」

愛液と破瓜の証が混じり合い、滑りをよくしている。

一定のリズムで腰を動かしていくと、紅瀬さんは首を仰け反らせた。

【桐葉】「ひぁ、あ、奥に、来てる……あぁ、はぁっ」

腰の動きに合わせて、声がだんだん大きくなる。

……隣の部屋は誰だったっけ?

こんな状況をシスター天池に知られたら、切腹モノだ。

【孝平】「紅瀬さんの中、ビクビクしてるよ」

【桐葉】「だ、だって……貴方の、すごく熱くて……」

【桐葉】「あぁ、やぁ、こすれて……る……ああぁっ!」

相変わらずすごい締めつけだ。

ペニスを吸引する力も半端じゃない。

少しでも気を抜いたら、たちまち連れていかれてしまうだろう。

【桐葉】「だめ……あぁ、私、あふぁあぁ」

【桐葉】「これ以上……私、どうなってしまうの……?」

とろんとしたまなざしで俺を見ている。

長い髪が首や乳房にまとわりついているのが、妙に扇情的だ。

俺はさらに脚を高く上げさせ、最深部に亀頭をねじり込む。

【桐葉】「ふああぁっ! あーっ……!」

額から汗がボタボタと流れ、紅瀬さんの太腿に落ちていく。

彼女を汚しているみたいな感覚。

【孝平】「くっ……」

グラインドすればするほど、膣奥が狭くなっていく。

ペニスはもう痛いほど腫れ上がっていた。

俺は深くゆっくりとペニスを動かしながら、その乳房をわしづかむ。

まるで鞠みたいに、たぷたぷと手の中で弾んでいる。

【桐葉】「くはぁ、はう、お腹が、熱い……」

【桐葉】「あぁ、しっかり、捕まえていて……っ」

【孝平】「俺は、ずっと紅瀬さんのそばにいるよ」

【孝平】「ずっと、ずっと……」

【桐葉】「うぅ……」

こんな切なそうな顔、誰にも見せたくない。

俺だけのもの。

俺だけの……。

【孝平】「桐葉……」

【桐葉】「……っ」

名前を呼ぶと、奥の方がきゅっと反応した。

【桐葉】「名前……」

【孝平】「ん?」

【桐葉】「名前……呼んでくれた」

【孝平】「嬉しいのか?」

紅瀬さんは、じっと俺を見つめる。

素直に認めるのが恥ずかしいのか。

【孝平】「かわいい名前だな、桐葉」

【桐葉】「んっ……」

【孝平】「大好きだよ、桐葉」

【桐葉】「う……あぁっ、あぁ……!」

一番奥に亀頭が触れた瞬間、紅瀬さんの腰がガクガクと震えた。

大量の蜜が、シーツに大きな染みを作っている。

【桐葉】「あぁ、私……はあぁっ、私……っ」

下腹部に雷のような快感が走る。

ぱっくりと割れた陰部にペニスが埋まっているのがよく見えた。

ペニスにこすられた小陰唇は真っ赤に充血している。

【孝平】「あぁ……」

すぐそこに限界が来ていた。

俺はがっちりと太腿を抱え、小刻みに腰を打ちつけていった。

【桐葉】「ひぁ、ひゃぅ、うぅ、あっ……あああっ……!」

頭の中が真っ白になる。

【孝平】「うぅっ……」

【桐葉】「はぅ、すごい……あぁ、熱い……ぁ……ふああぁっ」

【孝平】「もう、俺……」

【桐葉】「はあぁ、いいの……よ……あぁ、貴方の好きに……」

紅瀬さんの腰も、俺に合わせて動いていた。

何かが破裂する予兆を感じる。

【桐葉】「はあぁ、くっはぁ、あああ、あっ……やはあああぁっ」

ただひたすらにペニスをこすりつける。

【桐葉】「ひぁあぁ、んくっ、ああ、ふううあぁあぁっ」

視界がだんだん狭くなっていった。

互いの性器と性器を、これ以上ないほど密着させる。

【孝平】「うぅ……いくっ……!」

【桐葉】「あはぁ、はああぁ、はうあああああぁっ……!」

膣がぎゅっと締めつけてくる。

びゅくびゅく! びゅくううう!

【桐葉】「ああああぁっ!」

動くこともできずに膣の中へと射精していく。

出しても出しても、まだまだ精液が出てくる。

失神するかと思うほど、激しい射精感だった。

【孝平】「うぁ……あっ……」

【桐葉】「あぁ……はあぁ……」

愛液にまみれた太腿が、ぷるぷると震えている。

ペニスを抜いたばかりの陰部から、とろとろの白濁液が流れ出ていた。

【桐葉】「はぁ、はぁ……」

【孝平】「だ、大丈夫か……?」

【桐葉】「だ……いじょうぶ……」

ちっとも大丈夫そうじゃないぞ。

目の焦点は定まっていないし、声も切れ切れだ。

【桐葉】「はぁ……はぁ……」

【桐葉】「熱いのが……いっぱい」

【孝平】「す、すまん」

自分でも驚くほど出てしまった。

それもこれも、紅瀬さんがよすぎるからだ。

【桐葉】「あの……」

【桐葉】「その、気持ち……よかったのかしら?」

【孝平】「そりゃ、もちろん」

正面から聞かれると、かなり気恥ずかしいものがある。

【桐葉】「そう……」

【孝平】「紅瀬さんは?」

【桐葉】「……」

俺の問いに、何も答えない。

【孝平】「紅瀬さん?」

【桐葉】「……」

無視。

かなりご不満だったのか。

たちどころに動揺しまくる俺。

【孝平】「あのー……」

【桐葉】「……さっきは、そう呼ばなかったわ」

【孝平】「へ?」

……。

【孝平】「あぁ、名前?」

【桐葉】「……そう」

【孝平】「下の名前で呼んだ方がいいってこと?」

【桐葉】「どう取ってもらっても構わないけど」

なんじゃそりゃ。

【孝平】「桐葉」

【桐葉】「……っ」

【孝平】「って呼んでほしいなら、正直に言いなさい」

【桐葉】「私は、別に」

【孝平】「正直に言わないと……」

【孝平】「えいっ」

ぴたっ

俺はいまだに硬いままのペニスを、陰部にくっつけた。

【桐葉】「ひゃんっ」

ぺたっ

【桐葉】「ひあぁっ」

ぺちゃっ

【桐葉】「はああぁっ……!」

声に甘い響きが含まれる。

陰部はまだ濡れっぱなしだ。

【孝平】「……」

いたずらしてると、またヘンな気持ちになってくるから困る。

俺はどこまで欲深いのだ。

【孝平】「ほらほら、言わないか」

ぺちゃぺちゃっ

【桐葉】「やっ……そんなこと……っ」

恥ずかしそうに身をくねらす。

悪いお代官様になった気分だ。

【孝平】「言わないと、また入れちゃうぞ」

【桐葉】「ぁ……」

【孝平】「?」

【桐葉】「い、いいけど……」

いいのかよっ。

【孝平】「え……ほんとに?」

【桐葉】「何度も言わせないで」

ぴしゃりと言われた。

紅瀬さん……いや、これが桐葉流の照れ隠しなのだ。

【孝平】「じゃあ、いくよ」

【孝平】「桐葉」

【桐葉】「……あぁっ」

耳元で囁くと、桐葉はとろんとした顔でうなずいた。

俺は桐葉の身体を起こし、腿の上に乗せて向かい合わせに抱き合った。

【桐葉】「くうぅ……!」ぬぷっ、ずぷぷっ

ペニスを膣口にあてがうと、すぐに亀頭が内部に収まった。

ていうか、感度よすぎだろ。

実はすごくいやらしい子なのかもしれない。

普段はあんなにツンツンしてるのに。

【孝平】「自分で入れられる?」

【桐葉】「んっ……んんっ……」

ぎこちなく、でも確実にペニスが沈んでいく。

俺は桐葉の身体を思いきり抱きしめた。

あったかい。

幸せなぬくもりと重みを噛みしめる。

【孝平】「キスは?」

【桐葉】「……ぅ」

ためらってから、おずおずと舌を絡めてきた。

ぎゅっと抱き合い、濃厚なキスを交わす。

【桐葉】「あん……んちゅ……ちゅっ」

口内を探るように、舌を差し込む。

さっきよりはずっと積極的に求めてくる。

【桐葉】「んんっ……くぅっ……! あむぅ……!」

ずぶぶっ!

桐葉の腰が沈み、一番深い部分で性器がつながった。

再び訪れる快感に、腰が自然と震えてしまう。

【桐葉】「あ……深いっ……あぁ、ちゅっ、んぷ」

俺の胸で押しつぶされる乳房。

乳首をつまみながら、ペニスで陰部を突き上げる。

【桐葉】「はむぅ、んっ……あぁ、はぁっ!」

【孝平】「声、大きい、かも」

【桐葉】「わ、わかってるわ……で、でもぉっ」

どうしたらいいのか自分でもわからないようだ。

俺も、腰を動かすのをやめられない。

もう身も心も桐葉にハマっている。

つい数ヶ月前までは他人だった彼女に。

【孝平】「好きだよ……桐葉」

【桐葉】「んっ……わ……わた……しも……」

恥じらいながらも、そうつぶやく。

気持ちよくなると、いつもより素直になるのだろうか。

なんて指摘したら怒られるだろうけど。

【桐葉】「あっ……あぁ、こすれ……てる、んくぅ、ふあぁっ」

【桐葉】「そんなに、動かしたら……はふあぁっ」

呼吸するたびに、あそこがきゅっきゅと締めつけられる。

さっき出したばかりなのに、もう限界に到達しそうだ。

俺は下腹部に力を入れ、爆発しそうなものを押しとどめた。

【孝平】「腰、動かしてみて」

【桐葉】「くっ……は、恥ずかしいわ……」

【孝平】「大丈夫、見てないから」

【桐葉】「……嘘つき」

ずぷっ、ぬぷぷっ、ずちゅ……!

桐葉の腰が動き、いやらしい音が部屋に響く。

そのリズムに合わせるように、膣奥をノックした。

【桐葉】「もう、ヘンになりそう……っ」

【孝平】「俺も」

【孝平】「桐葉、すげーやらしいから」

【桐葉】「あ……貴方がそうさせてるんでしょう」

人のせいにしてるし。

お仕置きとばかりに、ズンズンと膣内を突きまくる。

【桐葉】「ひぁ、あああっ、だめぇっ」

駄目と言いながら、腰が揺れている。

そのたびに乳房がたぷたぷとバウンドした。

首筋に黒髪が絡みつく姿に、さらなる興奮を覚える。

【桐葉】「お願い、もう……少し、ゆっくり……」

【孝平】「こう?」

意地悪して、さらに激しくグラインドさせてみたり。

【桐葉】「はううううっ! あっ、ああーっ」

全身を震わせながら声をあげる桐葉。

クラスの誰も、桐葉がこんなにやらしい子だとは思わないだろう。

俺だけの秘密だ。

【桐葉】「だめ、もう……ヘンなの……あぁ、奥がっ……」

内腿が痙攣し、桐葉は背中をしならせた。

絶頂が近づいているのか?

【桐葉】「ひう、あふっ……あぁ、奥が、熱いのっ……」

うわごとのように喘ぎながら、俺に強くしがみついた。

【桐葉】「あぅ、く、来る……あぁ、ああっ、はふああああっ」

びくびくと膣内が収縮する。

容赦ない締めつけに、俺も限界寸前だ。

【桐葉】「あぁ、来るっ、あああぁ、抱きしめてっ……んくああぁっ」

【孝平】「俺も、一緒に……っ」

ベッドがきしむほど、腰と腰を打ちつけ合った。

肉がこすれ、接合部からとめどなく蜜が溢れる。

【桐葉】「ひああああっ、あ、んはあああぁ、あふああああっ」

強く抱き合い、二人で一緒に昇りつめていく。

視界が真っ白になった。

……駄目だ。

こんなに締められたら、もう爆発する……!

【桐葉】「はああぁっ、あっ、来る……! はふあぁ、んああああああぁっ!」

【孝平】「桐葉……っ!」

俺は最後の力を振り絞り、膣奥にペニスを叩きつけた。

びゅくうううっ! びゅびゅびゅびゅっ!

【桐葉】「あああぁーっ! んくううあぁぁっ」

腰が爆ぜ、すべての精液を桐葉の奥に注ぎ込んでいく。

二回目だというのに、まるで衰えを知らない勢いだった。

【孝平】「はぁ、はぁ、はぁ」

ドクドクとペニスが脈打っている。

【桐葉】「あぁ……っ」

内部は愛液と出したばかりの精液とで、とても熱い。

【桐葉】「はぁ……あぁ……はぁ」

桐葉は全身を弛緩させ、俺に寄りかかってきた。

【孝平】「……桐葉?」

【桐葉】「はぁ……あっ、動かさないで……」

【桐葉】「すごく、敏感に……なってるみたい」

やっぱり、いっちゃったんだろうか?

内部がまだビクビクしてる。

【桐葉】「身体が急に、ふわっとして……」

【桐葉】「お腹がとても熱くなって……」

【桐葉】「……後は、よく覚えてないの」

【桐葉】「私……どうしちゃったの……?」

【孝平】「俺も、桐葉と同じような感じになった」

【孝平】「たぶん、すごく自然なことなんだと思う」

【桐葉】「そうなの……?」

不思議そうに首を傾げた。

【孝平】「ようするに……」

【孝平】「よかった、ってことでオーケー?」

【桐葉】「……」

また黙り込んでしまった。

ちょっといじめてみるか。

【孝平】「嫌ならもうしないよ」

【孝平】「桐葉には絶対に嫌われたくないからな」

【桐葉】「……ぅ」

【孝平】「またしたい? それとも、してほしくない?」

【桐葉】「……くっ」

桐葉はしばらく唸っていたが、急にぎゅっと抱きついてきた。

【孝平】「おわっ」

【桐葉】「…………したい」

それは、とても小さな声で。

ほとんど聞き取れないぐらいの音だったけど。

まあ、これで勘弁しといてやるか。

にやにやしてしまうのを隠すように、その髪に顔を埋める。

【桐葉】「……何笑ってるの?」

【孝平】「笑ってない」

【桐葉】「変な人ね」

【孝平】「そうかもな」

【桐葉】「……ふん」

鼻で笑われた。

だんだんいつもの桐葉が戻ってきた気がする。

さっきまであんなに喘いでいたくせに。

なんか悔しくなってきた。

【桐葉】「……んっ!」

わざとらしく、つん、と腰を動かす。

桐葉はびくんと肩を揺らし、俺を睨んだ。

【桐葉】「な、何するのよ」

【孝平】「ちょっと動いただけだろ」

【桐葉】「今度動いたら許さないわよ」

【孝平】「ほう」

つんっ。

【桐葉】「あぁっ……!」

【孝平】「すまん、不可抗力だ」

【桐葉】「くぅっ」

さて、どうする紅瀬桐葉?

反撃を待っていると、桐葉は俺の顔を両手で挟み込んだ。

【桐葉】「スキあり」

【孝平】「んっ!」

唇をふさがれた。

舌を押しつけるような、激しいキスだった。

【桐葉】「んちゅ……んっ、ちゅぅっ」

【孝平】「う……っ」

頭の中がぼーっとする。

もう、されるがままだ。

【桐葉】「んん」

【桐葉】「許さないと言ったでしょう?」

【孝平】「はい……」

【孝平】「許さなくて、いいです」

【桐葉】「ふっ」

二人で笑い合う。

心から幸せだと思った。

俺の人生には、まだまだこんなに幸福なことがあるのだ。

【桐葉】「う……」

桐葉は腰を上げ、ゆっくりとペニスを引き抜いていった。

ぬぷっ。

【桐葉】「あぁ……」

性器同士が離れると、中にたまっていた体液がどろりと流れ出す。

俺はそばにあったティッシュで、陰部やその付近をふき取った。

【桐葉】「い、いいのよ、そんなこと」

【孝平】「いいって」

優しく陰部をこする。

桐葉は恥ずかしいらしく、うつむいてしまった。

//H-scene ends//

【孝平】「ふぅ……」

そういや、ここは桐葉の部屋なんだよな。

じっくりと中を観察する余裕もなかった。

俺は改めて、周囲を見渡してみる。

……。

なんというか。

よく言えば、ものすごくシンプルだ。

悪く言うと殺風景。

まるで一人暮らしを始めたばかりの部屋みたいだ。

執着のなさを、如実に表している。

【孝平】「……?」

唯一女の子らしいアイテムといえば、机の上にある猫の置物くらいか。

緑色の石でできた、高価そうな品だ。

よっぽど猫が好きなんだろう。

本人は認めないだろうけど。

【孝平】「綺麗好きなんだな」

少ない語彙の中で見つけた、精一杯の褒め言葉だった。

【桐葉】「何も置いてないだけよ」

【桐葉】「ただ眠る場所があればよかったの」

桐葉はベッドに横たわり、どこか一点を見つめている。

少し疲れたのか、目が眠たそうだ。

俺も隣に横たわり、髪をそっと撫でた。

気持ちよさそうに目を細める。

本当に猫みたいだ、と思う。

【孝平】「なあ」

【桐葉】「何?」

聞こうとして、詰まった。

【桐葉】「どうしたの?」

【孝平】「いや……」

【孝平】「どうやって男子フロアの方に帰ろうかと思って」

寸前になって、そんな台詞が出た。

【桐葉】「もう大丈夫よ」

【桐葉】「この時間なら、見回りはいないはず」

【孝平】「詳しいんだな」

【孝平】「さすがサボリのプロ」

【桐葉】「プロは捕まったりしないわ」

例の、シスター天池に捕まった時のことを言ってるのか。

【孝平】「猿も木から落ちる、ってやつだな」

【桐葉】「釈迦にも経の読み違い、と言って」

どっちも似たようなもんだろ。

【桐葉】「私……貴方に、ちゃんとお礼を言ってなかった」

【孝平】「え?」

【桐葉】「わざと窓ガラスを割ってくれた時のこと」

【孝平】「気にするな」

【桐葉】「駄目よ」

【桐葉】「あ……」

桐葉は、何度かまばたきをした。

【孝平】「どうした?」

【桐葉】「あれが、来る」

【孝平】「あれ?」

【桐葉】「眠りが……」

──あ。

強制睡眠だ。

【桐葉】「……嫌よ」

【孝平】「嫌ったって、しょうがないだろ」

【桐葉】「まだ眠りたくない」

【桐葉】「私、まだ……貴方と」

【桐葉】「話したいこと、あるのに」

ぎゅっ。

その小さな手が、俺の腕をつかむ。

心細げな顔。

【孝平】「大丈夫だよ」

【孝平】「桐葉が起きるまで、どこにも行かない」

【桐葉】「……本当?」

【孝平】「ああ」

【孝平】「ずっとこうやって、髪を撫でてやる」

【孝平】「リクエストがあるなら、歌ってやってもいいぞ」

【桐葉】「ふふ……」

【桐葉】「ありが……とう」

ゆっくりとまぶたが落ちていく。

【桐葉】「私……」

【桐葉】「貴方のこと……が……」

【桐葉】「……」

【孝平】「あ……」

完全に、落ちた。

後は静かな寝息だけが聞こえてくる。

【孝平】「なんだよ。最後の気になるじゃねーか」

俺は苦笑した。

まあ、いいか。

言葉に出さなくても、彼女の思いが伝わってくる。

俺に気を許してくれてるのだと感じる。

これが絆というものなのかもしれない。

俺は安らかに眠る彼女の髪を、ゆっくりと撫でた。

どうか、彼女の目覚めが幸福なものでありますように。

そう願いながら。

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