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//July 30//

【伊織】「だから、このサイズじゃ駄目なんだって」

【瑛里華】「直径30センチもあるのよ? いったい何が不満なのよ、もう」

【伊織】「お前、文化祭をホームパーティーか何かだと勘違いしてないか?」

【伊織】「直径3メートル。せめてこれぐらいはないとね」

【瑛里華】「あのね~~~」

文化祭まであと一ヶ月半。

もう、一ヶ月半しかないのだ。

大枠はほぼ固まっているが、それでもトラブルがないわけではない。

急遽スケジュールを変更したり、イベントを差し替えたりと、生徒会は大忙しだ。

当然、余裕もだんだんなくなってくる。

【瑛里華】「征一郎さん、ちょっといい?」

【征一郎】「なんだ」

【瑛里華】「うちの兄が、直径3メートルのミラーボールをほしがってるんだけど」

【征一郎】「ふむ」

東儀先輩は素早く電卓を叩いた。

【征一郎】「予算オーバーだ」

【瑛里華】「はい終了~」

【伊織】「くーーーっ!」

あっけなく一蹴される会長。

普段はバリバリと仕事をこなすくせに、たまに妙なこだわりで副会長を困らせる。

今回は、それがミラーボールだった。

【伊織】「ああ、困ったな」

【伊織】「ねえ支倉君。君の親戚にミラーボール工場の人いない?」

【孝平】「いません」

【伊織】「だよね」

【瑛里華】「手作りすればいいんじゃないの?」

【瑛里華】「アルミホイルとかで」

すかさず東儀先輩が電卓を叩く。

【征一郎】「予算内だ」

【瑛里華】「ラッキー♪」

【白】「私も、お手伝いしますっ」

【伊織】「よーし、じゃあみんなでDO IT YOURSELFだ!」

【伊織】「おー!」

【白】「おーっ」

【瑛里華】「……」

【征一郎】「……」

【桐葉】「……」

【白】「あ……」

白ちゃんはバツの悪そうな顔で、掲げた拳をゆっくりと下ろした。

【伊織】「なんだいなんだい、みんなノリが悪いね」

【伊織】「あと一ヶ月半しかないんだから、笑顔で乗り切っていこうよ」

【伊織】「ねえ紅瀬ちゃん?」

【桐葉】「……」

【伊織】「……?」

【伊織】「もしもーし? 紅瀬ちゃーん?」

【桐葉】「え?」

会長に耳元で話しかけられ、桐葉はようやく我に返った。

どこか焦点の定まっていない目。

俺は、桐葉の顔を覗き込む。

【孝平】「どうした?」

【桐葉】「どうもしないわ」

いつもの調子で、そう答える。

強制睡眠が来たわけでもないらしい。

……。

ここ最近、桐葉はずっとこんな感じだ。

以前にも増して、ぼんやりすることが多くなった。

顔色も悪い。

眷属は頑丈にできてるだなんて、前は言ってたのに。

【征一郎】「紅瀬」

【征一郎】「体調でも悪いのか?」

【桐葉】「いいえ」

【瑛里華】「兄さんがこき使うからでしょ」

【伊織】「俺?」

【征一郎】「いや、俺だな」

【征一郎】「今日はもう帰ってもいいぞ。二人とも」

【孝平】「え?」

東儀先輩は、俺を見てゆっくりとうなずいた。

【征一郎】「今日の仕事はほとんど終わっているからな」

【征一郎】「紅瀬を送ってやれ」

【孝平】「はい」

何やらお許しが出たようだ。

【伊織】「また明日~っ」

【瑛里華】「お疲れ様」

【白】「お気をつけて」

【孝平】「それじゃ、お先に失礼します」

俺は桐葉を伴い、監督生室を後にした。

桐葉は、終始無口だった。

もともと口数は多い方ではないが、それにしたってしゃべらない。

心ここにあらず、といった様子だ。

ただの夏バテならいいのだが、もちろん彼女にその可能性はない。

【孝平】「桐葉」

俺はぼんやりと歩く桐葉の腕を掴んだ。

【孝平】「ちょっとそこに座ろうぜ」

【桐葉】「どうして?」

【孝平】「俺が座りたいんだって」

半ば強引に、そばにあったベンチに座らせた。

周囲に人の気配はない。

太陽の光が、俺たちを容赦なく攻撃する。

実に夏らしい午後だった。

【孝平】「……疲労回復には何が効くんだったかな」

【桐葉】「土踏まずにニンニクを貼るの」

無表情のまま、桐葉は言う。

あいにく、ニンニクは持ち合わせていない。

【孝平】「他になんかないのか?」

【桐葉】「バナナ」

バナナも、ない。

【孝平】「わかった」

【孝平】「俺が後で、ニンニクとバナナを調達してくる」

【桐葉】「疲れているの?」

【孝平】「俺じゃなく、お前だ」

そう言うと、桐葉は首を傾げた。

【桐葉】「私は……」

【孝平】「私は疲れない、とか言うんだろ」

【孝平】「でも、おかしいって。特にここ最近」

【桐葉】「……」

桐葉は黙りこくってしまう。

【孝平】「何かあったのか?」

【桐葉】「別に」

【孝平】「嘘つけ」

【桐葉】「嘘なんか……」

桐葉はかぶりを振ってから、ため息をついた。

【桐葉】「本当になんでもないのよ」

【桐葉】「ただちょっと、あまりよくない夢を見るだけ」

【孝平】「夢?」

俺は桐葉の顔を覗き込んだ。

【桐葉】「……そう」

【桐葉】「ただの夢よ」

夢、ときたか。

こればかりは、俺もどうすることもできない。

【孝平】「添い寝してやろうか?」

【桐葉】「……」

【孝平】「いや、冗談です」

【桐葉】「冗談なの?」

【孝平】「え」

【桐葉】「……ふ」

こつん。

桐葉は、俺の肩に寄りかかった。

小さなつむじが見える。

これは、甘えているのだろうか?

【孝平】「それじゃ寝づらいだろ」

【孝平】「なんなら膝枕のサービスもつくけど」

【桐葉】「そう」

ごろん。

本当に、俺の太腿に頭を乗せてきた。

俺は思わず周囲をきょろきょろと見回す。

オーケー。誰もいない。

【孝平】「寝心地はどうだ?」

【桐葉】「硬い」

【孝平】「は!?」

【桐葉】「脚が硬い」

……びっくりした。

【桐葉】「でも、悪くないわ」

ゆっくりと目を閉じる桐葉。

髪がさらりと落ち、ぷっくりとした耳たぶが見える。

卵のようにすべすべした頬。

つやつやの長いまつげ。

何度見てもドキドキする。

そういや、前に膝枕してもらったことがあったよな。

逆の立場も、なかなか悪くない。

【孝平】「暑くないか?」

【桐葉】「平気」

【孝平】「ジュースとかいるか?」

【桐葉】「いらない」

【桐葉】「あまり気にしないで」

【孝平】「でも」

【桐葉】「……あまり、優しくしないで」

小さな声でつぶやいた。

なんでそんなこと言うんだろう。

【孝平】「優しくしたくなるだろ、そりゃ」

【孝平】「好きなんだから」

俺は桐葉の手を取った。

なんでそんなに、寂しそうな顔をするんだ。

俺がそばにいるのに。

【孝平】「もっと頼ってくれてもいいんだぞ」

【桐葉】「……」

桐葉は何も答えなかった。

ただ、俺の手を一瞬だけ強く握り……。

ゆっくりと、放した。

//August 2//

//Another view : Kiriha//

私は、どこに向かっているのだろう。

風が冷たい。

震える膝が、もう一歩も歩けないと訴えている。

全身が鉛のようだ。

それでも、一歩前に踏み出す。

つま先から引き裂かれるような痛み。

鋭利な刃物のような草が、容赦なく私の脚を傷つける。

……。

彼がいなくなって、どれくらいの時間が流れたのか。

何時間?

何年?

何百年?

時間の感覚など、もうない。

悲しみも、喜びも、孤独も。

すべての感覚を置き去りにしてきた。

私には、もう何もない。

朽ち果てることも許されず。

諦めることも許されず。

ただ歩き続けるだけの亡骸だ。

私は、亡骸だ──

……。

【桐葉】「……?」

やがて、草原の向こうに何かを見た。

なんだろう?

わずかな光をまとうもの。

この強い風に吹かれても、微動だにしない。

ただそこに、必然のように存在している。

……。

私は痛む脚を引きずった。

あともう少し。

もう少し。

……。

【桐葉】「……」

それを前にして、私は歩みを止めた。

大きな六角柱だ。

私の背丈ぐらいはあるだろうか。

とても厳かな微光を放っている。

【桐葉】「……綺麗」

一点の曇りもない、美しい石だ。

水晶の結晶かもしれない。

心まで透き通るような透明度だった。

……。

涙がにじむ。

言いようのない感情が湧き出る。

混じりけのないその石が、私を映している。

この石は、いつからここに在ったのか。

他者を必要とせず。

何かを求めるでもなく。

何にも混じらず。

ただそこに在り続けたのか。

……。

私は、手を伸ばした。

触れたい。

汚れのない、この美しい石に──

【??】「……よく来たな」

触れようとして、手を止めた。

あの声だ。

ここに来るまでに、何度も聞いた声。

【??】「疲れただろう」

【??】「お前を歩かせるのは忍びなかった」

優しい声だった。

まるで、私自身をねぎらうかのような。

……この石?

あの声の主は、この石だったの?

私をここまで導いたのは、この石だったの?

【??】「さあ、触れてごらん」

【??】「遠慮することはない」

【桐葉】「……でも」

一瞬、戸惑う。

触れたい。

でも、触れたらもう二度と、戻れなくなる気がする。

確証はないけど、そんな気がした。

【??】「迷うことはない」

【??】「さあ……」

目をそらせなかった。

その石から。

清らかな光から。

もう二度と、戻れなくても──

……。

私は手を伸ばした。

【桐葉】「……!」

氷のように冷たい。

触れた場所から、石が発光する。

柔らかな光が私を包んでいく。

全身の痛みが薄れていく。

……どうしてだろう。

少しずつ心がほぐれていく。

どうしてこんなに、満たされた気持ちになるのだろう。

私は、ずっと。

ずっとこの石を捜していたのかもしれない──

【桐葉】「……っ」

目を開けた瞬間、飛び起きた。

空一面の茜色。

青々しい草の匂い。

額の汗を手でぬぐった。

【桐葉】「夢……」

夢だったの?

本当に?

……。

【桐葉】「もう……やめて……」

私は膝を抱えた。

身体が重い。

身動きできないほど疲弊していた。

だったら、夢から醒めなければよかった。

あんなに満ち足りた気持ちでいたのに。

すべての苦痛から解放されたのに。

もう、疲れた。

夢と現を行き来するのは……。

……。

私は顔を上げ、草原の向こうを見つめる。

そこに、あの石はない。

私を呼ぶ声も聞こえない。

……。

今、ようやくわかった。

あの石は、私の主だ。

主が私を呼んでいるのだ。

私たちの鬼ごっこは、まだ終わっていなかった。

いや、終わらせることはできない。

だって……。

そうでなければ、私たちはこのあり余る時間をやり過ごせない。

人は何か目的がなければ生きられない。

私は常に、主の存在を感じていた。

誰といても。

彼といても。

私の意識の奥底には、常に主がいた。

私がこの世に在り続ける限り、主もそこに在るのだ。

永遠の生命を持つ者同士として。

そうやって、私たちはこの長い時間を生きてきた。

……。

それが、私と主のルールだ。

永遠に終わることのないもの。

結晶のように確かなもの。

混じりけのない、透明な。

透明な、世界。

【桐葉】「……行かなければ」

手の鳴る方へ、行かなければ。

私は──

……。

ピルルルル ピルルルル♪

【桐葉】「……っ!」

携帯の着信音が鳴り、我に返った。

私は慌ててポケットから携帯を取り出す。

……彼からのメールだ。

わずかに震える指で、受信ボックスを開いた。

『ういっす。何してる?』

『来週から、学食でトムヤムクン祭りが開催されるぞ』

『辛いもの食って疲れを吹き飛ばそうぜ』

『じゃ、また明日』

私は時計を見た。

もう六時だ。

いったい、何時間ここで眠っていたんだろう。

そんなことも思い出せない。

……。

今日の私はどうかしている。

どうして、夢から醒めなければいいなんて思ったりしたんだろう。

夢の中に、彼はいない。

でも、この世界には彼がいる。

それは本当だ。

私は「了解」とだけ打って、メールを返信した。

彼はどこにも行かない。

今はまだ、私のそばにいてくれる。

今は、まだ……。

//Another view ends//

//August 3//

プルルルル……プルルルル……

【孝平】「……」

プルルルル……プルルルル……

……。

出ない。

珍しいこともあるものだ。

いつもならすぐに出るのに。

俺は時計を見た。

午前九時五十分。

だいたいこの時間に連絡を取り合い、下で待ち合わせる。

それから一緒に、監督生室に向かう。

夏休みに入ってからはずっとそうだった。

……風呂にでも入ってるのかな。

午前十時半。

桐葉からの連絡はない。

もう一度電話してみるが、やはり桐葉は出なかった。

どうしたものか。

俺はしばし考えてから、携帯を手に取る。

プルルルル……プルルルル……

【瑛里華】「もしもし」

【孝平】「おう、俺だ」

【瑛里華】「おはよう」

【瑛里華】「どうしたの?」

【孝平】「今、部屋か?」

【瑛里華】「そうだけど」

【孝平】「いや、大した用事じゃないんだけどさ」

【孝平】「今日、どっかで桐葉見たか?」

【瑛里華】「……紅瀬さん?」

【瑛里華】「見てないけど、何かあったの?」

【孝平】「いや、何もない」

【孝平】「ただ、電話に出ないからどうしたのかと思って」

【瑛里華】「へえ~。意外と心配性なのね」

ひやかすような声だった。

そう思われてもしかたない。

ただ、妙に心配だったのだ。

ちょっと電話に出ないだけで不安になるのも、おかしな話だけど。

【孝平】「すまん。つまんないことで電話しちゃって」

【瑛里華】「いいわよ」

【瑛里華】「今ちょうど出るところだったから、紅瀬さんの部屋に寄ってみるわ」

【孝平】「ありがとう」

【瑛里華】「じゃ、また後でね」

ブチッ

電話が切れた。

……。

冷静に考えたら、強制睡眠に突入しただけかもしれないじゃないか。

俺はため息をついた。

どちらにせよ、ここで携帯を眺めてたってしかたない。

とりあえず、外に出よう。

夏休みのせいか、寮内はいつもより静かだった。

明らかに人の気配が少ない。

そういえば司は、毎日のようにバイトだと言ってた。

かなでさんは夏期講習で忙しそうだ。

陽菜も友達と遊んだり自習したり掃除したりで、何かと多忙らしい。

みんな、それぞれの夏休みを過ごしているのだ。

【孝平】「……?」

立ち止まる。

そして、数歩戻った。

談話室のガラス窓から、見慣れた人影を見つけたからだ。

俺は慌ててドアを開けた。

【孝平】「桐葉!」

【桐葉】「……」

部屋に入り、桐葉を呼んだ。

しかし、彼女は俺には気づかず、ぼんやりと外を眺めている。

強い既視感に襲われた。

……これは、つい一ヶ月前までの彼女の姿だ。

あてもなく、何かを捜していたあの頃の彼女。

【孝平】「桐葉?」

【桐葉】「……?」

桐葉はゆっくりとこちらを振り返った。

ひどく顔色が悪い。

昨日会った時よりも疲れているように見える。

【孝平】「こんなとこで何してたんだ?」

【桐葉】「私?」

【桐葉】「私は……」

俺をゆっくりと見上げる。

【桐葉】「私、どうしてここにいるの」

目が虚ろだ。

すぐには言葉が出てこなかった。

【孝平】「覚えてないのか?」

桐葉はこくりとうなずく。

……そんな。

そんなの、どう考えたって変だろう。

【桐葉】「あ……」

【桐葉】「今、何時?」

【孝平】「もう11時になる」

【桐葉】「もう?」

桐葉は弾かれたように立ち上がった。

が、ぐらりとバランスを失う。

【桐葉】「きゃ……」

【孝平】「お、おいっ」

俺は慌てて桐葉のもとに駆け寄った。

倒れそうになるところを、身体を支えてなんとか阻止する。

【孝平】「おい、大丈夫か?」

【桐葉】「ごめんなさい」

桐葉は俺にしがみついた。

とても強い力だった。

まるで振り落とされまいとするみたいに。

【孝平】「もう、平気だよ」

【孝平】「心配するな」

長い髪を撫でながら囁く。

桐葉は小さく震えていた。

こんなに弱々しい彼女を、いまだかつて見たことがない。

【孝平】「歩けるか?」

【桐葉】「ええ」

【桐葉】「でも……もう少しだけ、こうしていて」

【桐葉】「行かないで」

【孝平】「桐葉……」

俺は桐葉を抱きしめた。

どうしたらいいかわからない。

そんな自分が歯がゆかった。

ついこの前までは、背筋をぴんと伸ばして歩いてたじゃないか。

俺を凍てつかせるような目で、皮肉を口にしてたじゃないか。

俺が手を握ったら、同じ強さで返してきただろう?

なのに。

桐葉の中で、何が起こっているかがわからない。

俺には、桐葉が弱っていくのを止めることができないのだ。

【孝平】「桐葉」

【孝平】「今日はずっと一緒にいよう」

俺は笑顔を浮かべた。

【孝平】「何かしてほしいことがあるなら、なんでもしてやる」

【孝平】「何かほしいものがあるなら、パシリに使ってもいい」

【孝平】「怖い夢を見たら、すぐに起こしてやる」

【桐葉】「……」

【孝平】「な? そうしよう」

そう囁くと、桐葉は小さくうなずいた。

窓の外を、じっと見つめながら。

それから俺たちは、桐葉の部屋に向かった。

桐葉がこんな調子では、とても実行委員の仕事を進められそうにない。

副会長にその旨を連絡すると、すぐにOKが出た。

【瑛里華】「仕事なんていいから、ゆっくり休んでって伝えて」

【瑛里華】「後のことは、征一郎さんと支倉くんがきっとなんとかするわよ」

……ということらしい。

桐葉の寝息が聞こえてきたのは、部屋に来てだいぶ経ってからだ。

ベッドに横になっても、なかなか寝つかなかった彼女。

むしろ、眠りに入ろうとするのを拒否しているように見えた。

【桐葉】「すぅ……」

さすがに疲れたのか、今では安らかな寝顔を浮かべている。

そこに、不安の色はない。

どうやら今は、「あまりよくない夢」とやらを見ていないようだ。

俺は息を吐いてから、窓を眺める。

四角に切り取られた夕暮れの空。

夏が少しずつ通り過ぎていくのを感じる。

……。

そうだ、夏休みが終わる前に。

桐葉ともう一度出かけよう。

海に行こう。

映画を観よう。

浴衣を着て花火大会に繰りだそう。

楽しいことは、まだまだいっぱいあるはずだ。

俺たちにはたくさんの時間があるのだから。

……そしたら、きっと元気になる。

そうだろ?

【桐葉】「……」

桐葉のまぶたが、少しずつ開いていく。

俺は彼女のかたわらで、その様子を見守っていた。

よかった。

このまま二度と起きなかったらどうしよう、なんて考えてた。

【孝平】「気分はどうだ?」

【桐葉】「……まっくら」

【孝平】「あ、ごめん」

部屋の明かりをつけるのも忘れていた。

【桐葉】「私……寝てたの?」

【孝平】「ああ」

【孝平】「そりゃもうぐっすり」

【桐葉】「そう」

何度かまばたきをしてから、俺を見上げる。

汗ばんだ額に、前髪がまとわりついていた。

そばにあったタオルで汗をふいてやると、桐葉は深く息を吐く。

そんな彼女が、妙に小さく見えた。

【孝平】「ちょっと疲れてるんだよ、お前」

【孝平】「実行委員なんて、慣れないことするからさ」

そんなことで桐葉が弱ってるんじゃない。

もっと別のところに理由があるはずだ。

でも俺は、その理由を導き出すことができない。

【孝平】「やっぱさ、夏休みは休まないといけないんだよ」

【孝平】「だから遠慮なく寝てていいんだぞ」

【桐葉】「……駄目よ」

【桐葉】「戻れなくなる」

【孝平】「え?」

【桐葉】「……」

答える代わりに、桐葉はそっと目を閉じた。

小さく持ち上げられる顎。

胸の奥が、ぎゅっと鷲掴みにされる気持ち。

【孝平】「……」

ベッドに手をつき、ゆっくりと唇を重ねる。

触れるだけの、優しいキスだ。

【桐葉】「……もっと」

唇を離してすぐに、催促された。

なんか、いつもの桐葉じゃないみたいだ。

こんなに素直にせがまれるとかなり調子が狂う。

【桐葉】「んっ……」

舌が触れ合い、ぴちゃぴちゃと音がする。

背筋が甘くしびれた。

キスだけで果ててしまいそうだ。

【孝平】「……こら。甘えん坊め」

そう囁くと、桐葉は甘い吐息を漏らしながらうつむいた。

【桐葉】「なんでもしてくれる、と言ったわ」

言った。確かに。

【孝平】「それは、あれだ」

【孝平】「コーラ買ってこいとか、クリーニング出してきてとかそういうやつ」

【桐葉】「もっと簡単なことでいいの」

【桐葉】「私を、見て」

桐葉は顔を上げた。

【桐葉】「近づいて」

鼻先がくっつくほど、近くに寄る。

【桐葉】「……触れて」

言われるまま、触れた。

その温かい唇に。

【桐葉】「ん……ふぅ……」

桐葉の手が、俺の首に回る。

初めてキスした時よりも緊張した。

主導権を握られっぱなしで、焦る。

すべてを忘れてしまいそうなほど、桐葉の唇は甘かった。

……これは、いかん。

俺はもう一度唇を離し、桐葉の顔を両手で挟む。

【孝平】「ほら、桐葉、腹減ってるだろ?」

【孝平】「今日一日飲まず食わずじゃないか」

【桐葉】「減ってない」

【孝平】「なんか食わなきゃ駄目だって」

【孝平】「メシ買いにいってやろうか? それとも学食行く?」

【桐葉】「……」

【孝平】「トムヤムクン祭りはまだだけど、担々麺ならあるぞ」

【桐葉】「……わかったわ」

桐葉はゆっくりと起き上がった。

ベッドから下り、不安定な足取りでバスルームの方へと歩いていく。

今にも転倒しそうで、俺は慌てて桐葉に近寄った。

【孝平】「おい、危ないって」

【孝平】「無理に外出なくてもいいんだぞ?」

【桐葉】「平気」

そう言って、桐葉は上目遣いに俺を見た。

【桐葉】「その前に……シャワー浴びたいの」

【孝平】「え……」

桐葉が俺のシャツをつかむ。

少しだけ恥ずかしそうな顔。

だがそのまなざしは、熱にうかされたように潤んでいる。

【桐葉】「……手伝って」

俺は、ごくりと唾液を嚥下した。

桐葉はシャツから手を放し、バスルームのドアを開ける。

大きく息を吸い込んでから、俺はその後に続いた。

何かしゃべらなきゃ、と思えば思うほど言葉が出ない。

心臓が早鐘を打っている。

この狭いバスルームで二人きり。

手の届く場所に、裸の桐葉がいる。

もちろん、俺も服を脱いだ。

【桐葉】「……」

桐葉は俺に背を向けていた。

俺はシャワーヘッドを持ち、そのなめらかな背中にお湯をかける。

脇からチラチラと見える、豊かな胸。

ウエストから腰にかけての、優雅なライン。

どうして桐葉は、俺を招き入れたのか。

今日の桐葉は、いつもの桐葉じゃないみたいだ。

【孝平】「やっぱり、その」

【孝平】「俺がいると狭いだろ?」

【桐葉】「いいの」

【桐葉】「ここに、いて」

【桐葉】「私に触れて」

【孝平】「……っ」

そんなことしたら、俺は自分を止められない。

明らかに体調の悪い彼女に、無理を強いてしまう。

なのに、桐葉の背中は、俺が来るのを待っている。

【桐葉】「お願い」

なぜそこまで、俺を求める?

嬉しい気持ちと同じくらい、不安が募る。

……でも。

桐葉の気持ちに応えたい、と思う自分がいる。

それほど強く、俺を必要としてくれるなら。

【桐葉】「……ぅ」

俺は彼女の背後から、首筋にそっとキスをした。

水を弾く、綺麗なうなじだ。

シャワーのせいか、肌が火照っている。

今度は首筋から肩に沿って、舌を這わせた。

【桐葉】「はぅ……っ」

桐葉の声がバスルームに響く。

脳髄までとろとろになってしまいそうなほど、甘い声だった。

俺は我慢できず、桐葉をこちらに向かせ、抱きしめる。

//H-scene starts//

二人の濡れた身体が、ぴったりと触れ合った。

【孝平】「……あったかい」

桐葉の鼓動が伝わる。

彼女の腰がもぞもぞ動くのは、俺の下半身があたっているからだろう。

でも、こればかりはどうにも収めようがない。

肩にキスを繰り返しながら、そっと胸に触れる。

【桐葉】「……あ……ぁっ」

ツンと上向いたバストを、下から揉み上げた。

もぎたてのフルーツみたいな弾力がある。

もうすでに乳首は硬く尖っている。

興奮してたのは、俺だけではなかったようだ。

そんな彼女が愛しくて、骨がきしむほど抱きしめてしまいたくなる。

【桐葉】「ふぁ、あっ……んっ」

俺は右の乳房を揉みながら、左手をそっと下腹部に伸ばす。

薄い茂みに隠れた三角の部分を、指で撫で回した。

【桐葉】「んぁ、あ、やぁっ」

軽い抵抗を見せるが、俺の手を振り払わない。

それをいいことに、割れ目へと指を滑らせた。

【桐葉】「……あっ……はあああぁっ……!」

粘膜に指が触れた瞬間、桐葉の身体がビクビクと震える。

人差し指に、とろりと愛液が落ちるのを感じた。

【孝平】「……桐葉?」

【桐葉】「はぁ……あ……はぁっ……」

肌がじわじわと熱くなる。

もしかすると、軽くいってしまったのかもしれない。

俺は痙攣する陰唇を指でかき分け、膣口を中指で刺激した。

【桐葉】「んっ、ま、まだ……あぁっ」

腰がぶるぶると震える。

まだ敏感になっているのだ。

ぷっくりと腫れたヒダが指に絡みついてくる。

【孝平】「こんなに感じてるんだ」

【桐葉】「くっ、あっ……」

くちゅっ……くちゅぅ、ぬちゅっ

大きく円を描くようにして、いやらしい蜜壺を愛撫する。

中にはたっぷりと愛液がたまっていた。

それをかき混ぜるようにして、くちゅくちゅと音を立たせる。

【桐葉】「やぁ、あっ……いい……っ」

膣口がきゅっきゅと収縮運動を行う。

まるで指を飲み込もうとするみたいに。

俺は硬くなったペニスを、桐葉の太腿に押し当てた。

もう痛いほど先端が膨れている。

【桐葉】「あ……あたってる……んっ、はぁんっ」

人差し指を膣口に沿わせ、くい、と第一関節まで挿入した。

溶けてしまいそうなほど熱い粘膜に迎え入れられる。

たまらなくなって、小刻みに人差し指を動かした。

【桐葉】「んんっ、ふうっ、あっ……いい、あぅっ」

湯気の中に、桐葉の声が舞う。

自然と腰を、俺の股間へと押しつけてきた。

彼女も俺を求めている。

とても激しい何かを、この身体に秘めている。

だから俺を、このバスルームに誘ったんだろう。

【孝平】「……もっと奥に、いいか?」

【桐葉】「ぅ……来て……」

ゆっくりと回転させながら、指を押し進めていく。

絶頂を迎えたばかりの内部は、俺の指を激しく締めつけた。

ものすごい密着感だ。

【桐葉】「んぁっ、あぁ、もっと……あぁっ、はあぁっ」

濡れた髪が、肩や乳房に貼りつく。

その素肌は、熱気で艶やかなピンクに染まっていた。

余分な肉はついていないが、腰のあたりは女らしい丸みがある。

思わずかぶりつきたくなるような、みずみずしい肢体だった。

【桐葉】「やぁ、あっ、ひぁ……っ」

親指でクリトリスを探し当て、先端をクニクニと突く。

ねっとりと蜜を含んだそれは、さらに尖って自己主張をした。

【桐葉】「ひぁ、指がっ……あぁ、もう、そこは……っ」

クリトリスを押しつけるようにして、腰を沈めてきた。

いったい、この身体はどこまでいやらしくなってしまうのか。

【孝平】「もうやめた方がいいか?」

【桐葉】「いやぁっ、やあっ……駄目……っ」

身体をしねらせ、泣きそうな目で俺を振り返る。

【桐葉】「もっと、奥に来て……」

唾液で濡れた唇。

俺は膣内に入れた指を、前後に激しく動かした。

【桐葉】「んはぁ、あっ……! 奥に、ああぁっ」

ぬぷぅっ! ぬちゅっ、ぬぷぷっ!

愛液が奥から大量に流れ、もう手はべちょべちょだった。

ぷるっとしたお尻が、手の動きに合わせて揺れる。

重量感のある乳房も、ゆさゆさと手のひらの上で弾んだ。

【桐葉】「はぁ、あふぁ、気持ち……いい……あふぅっ」

我慢できないといった様子で、俺に抱きついてくる。

ふっくらとした乳房が、俺の胸でぷにっと潰れた。

苦悶の表情が、狂おしいほどに綺麗だ。

いつもとのギャップに、興奮も増してくる。

【桐葉】「貴方の……とても大きくなってる……」

桐葉は耳元で囁いた。

【孝平】「桐葉がそんな風に俺を誘うからだ」

【桐葉】「……私のせい?」

【孝平】「違うか?」

【桐葉】「違うわ」

【桐葉】「私をふしだらにしたのは、貴方」

そう言って、俺の耳に口づけた。

身体の芯が熱い。

俺は桐葉の太腿を、ぐいっと持ち上げた。

【孝平】「もう、我慢できない」

立ったまま、ペニスを陰部にあてがう。

しっとりとした粘膜が亀頭に吸いついた。

【桐葉】「あぁっ……!」

ずずっ……ずぶぶぶっ……!

腰を突き上げ、膣内を目指す。

ゆっくりとペニスが埋まっていく。

【桐葉】「あんっ、あ、来てる……あふぁっ、ああっ」

さらに高く太腿を掲げ、陰部を開かせた。

深いピンクのヒダが割れ、ずぶずぶとペニスを飲み干していく。

たっぷりと濡れてはいるが、キツすぎてなかなか奥まで届かない。

俺は勢いをつけて、ペニスを差し込んだ。

【桐葉】「くぁっ……! あっ、太い……はあぁっ!」

ずぶぶぶぶっ……!

一番深い部分に辿り着くと、結合部から愛液が溢れ出した。

下腹部から、一気に脳天へと快感が押し寄せる。

【桐葉】「やぁっ……いっぱいになって……る……あぁ、はふぁっ」

俺の首に手を回し、力いっぱい抱きついてくる。

さらに性器の密着度が高まり、桐葉は全身を震わせた。

ただ入れてるだけで、こんなにも気持ちいい。

少しでも動いたら、すぐに絶頂を迎えてしまいそうだ。

【桐葉】「う……ぅ……っ」

【孝平】「……?」

気づけば、桐葉の瞳に涙が滲んでいる。

俺のことを、強く抱きしめている。

【孝平】「桐葉?」

【桐葉】「もっと、強く抱いて……」

【桐葉】「もう、私を離さないで」

子供みたいな、健気な目だった。

こんなに強く抱き合っているのに。

それでもまだ、彼女の中の不安は消えないのか。

何が彼女をそうさせているのか。

【孝平】「……離さない」

【孝平】「ずっと桐葉のそばにいる」

俺は桐葉のお尻を掴み、ゆっくりと腰を動かした。

【桐葉】「あっ……」

【孝平】「これからも、もっともっと桐葉を抱きたい」

【孝平】「もっと桐葉を気持ちよくさせたい」

カリ部分が膣壁に引っかかり、目の奥に火花が散った。

内部はさらに波打ち、道を狭めていく。

【桐葉】「私を……味わって」

【孝平】「あぁっ……」

桐葉は腰を少しだけ引いてから、一気に沈めた。

不覚にも、ガクガクと膝が震えてしまう。

【孝平】「そんなことしたら、いっちゃうだろ……」

【桐葉】「……駄目」

ずぶうううぅっ!

【孝平】「くぁっ……!」

桐葉は同じように、リズミカルに腰を動かす。

俺の事情などおかまいなしだ。

【孝平】「こんなにいやらしく腰を動かして……」

反撃を企む俺は、がっちりと桐葉の腰を固定した。

【桐葉】「やっ……動いて……っ」

【孝平】「駄目だ」

【桐葉】「お願い、あぁ、じらさないで……っ」

じりじりと腰が動く。

俺はその姿勢のまま、柔らかな胸を揉みしだいた。

指の間から、ぷるっとした肉がはみ出ている。

手のひらの中心に、乳首がコリコリとあたっていた。

【桐葉】「お願い……おかしくなりそう……」

桐葉は執拗に腰を押しつけてくる。

こんなに強く求められたのは初めてだ。

抱けば抱くほど、新たな桐葉の素顔が見つかる。

俺は思いきり腰を引いてから、勢いをつけて最深部にペニスをねじ込んだ。

【桐葉】「くっはぁっ……! はああぁっ!」

愛液がかき出され、太腿を伝っていく。

中はぶるぶると震え、ペニスの根元をぎゅっと締め上げてきた。

【桐葉】「はぁ、ふああぁっ、すごい……んはあぁ、やぁっ」

濡れた髪を振り乱し、大きく身体を仰け反らせる。

たまらなく淫らな姿だ。

こんなに狭い場所で、こんなに大きな声を響かせて……。

【桐葉】「ひあぁっ、あっ、奥に、もっと来てっ……ああっ」

自ら脚を高く上げ、ぴったりと性器を合わせてくる。

半開きになった口元から、透明な唾液が喉へと伝っていく。

【桐葉】「あぁ、貴方を、感じてる……一番、深いところで……」

【桐葉】「すごく……つながってる……あぁっ、はあぁっ」

【孝平】「俺も、桐葉を感じてるよ」

【孝平】「桐葉のあそこが、気持ちいいって泣いてる」

【桐葉】「そ、そんなこと……っ」

わざと卑猥なことを言うと、膣内がきゅうっと締まった。

俺は下腹部に力を入れ、神経を集中する。

快感の波が押し寄せてくるのを感じた。

俺は目をつぶり、激しくペニスを突き上げた。

【桐葉】「ひあっ、あ、駄目っ……ああぁ、駄目、あああっ」

【桐葉】「もう、立っていられな……あぁ、ひあぁ、何か、来る……っ」

ずぶっ! ずぶぶ、ぬぷっ!

【孝平】「はぁっ……桐葉っ……」

【桐葉】「来る……あぁ、もう、もう……ああぁ、んはあああぁっ」

俺の頭をかきむしり、腰を揺らしてくる。

俺の下腹部は、摩擦で泡だった愛液で濡れていた。

【桐葉】「んんぁっ、はぁ、来る、来る、ああああぁ、ふああああああっ」

【桐葉】「もっと、強く、あぁ、来て、あああぁ……いいっ、ひああああああっ」

頭の中が、だんだん白くなっていく。

すべての意識が性器に集中している。

俺はただ、腰を激しく揺らすことしかできない。

つま先がしびれ、内臓がぎゅっと上がっていく。

もうこれ以上は、我慢できなかった。

【桐葉】「ああああ、いくっ……あああぁ、あぁ、いくぅっ……はあああああっ」

【孝平】「俺も、一緒に……っ」

【桐葉】「一緒に、お願いっ……あぁ、いく、んはああぁ、もう……あああああっ」

【孝平】「桐葉っ……!」

亀頭が膣奥にあたった瞬間、全身が燃えるように熱くなった。

【桐葉】「はああぁ、いくっ……ああぁ、んはあああっ、あああああああああっ!」

びゅくびゅくっ! びゅびゅっ、どくんっ!

全身を貫く快感の後、俺はすべての精液を桐葉に放った。

白濁液は飛び散り、桐葉のお尻や腹部を白く染めていく。

外気に触れたペニスは、いつまでも震えるのをやめなかった。

【孝平】「……っ」

もう、立っているだけで精一杯だ。

【桐葉】「ああああぁ……はぁっ……はぁ……」

俺に全体重を預け、桐葉は息を切らせていた。

恍惚とした表情が、快感の大きさを物語っている。

【桐葉】「はぁ……あぁ……っ」

【桐葉】「私……身体が、あぁ……動かないわ……」

【孝平】「……いっぱいいっちゃったから?」

【桐葉】「う……」

反論できないようだ。

桐葉は唇を尖らせてから、俺の肩を甘噛みした。

【孝平】「い……痛いんですけど」

【桐葉】「んん」

痛いけど、愛しい痛みだ。

身も心も、桐葉に求められているのを感じる。

もしこのまま噛みちぎられても、この気持ちは変わらないだろう。

【桐葉】「……お腹が熱いわ」

桐葉は、精液まみれになった下腹部を見た。

【孝平】「汚しちゃって、悪かった」

ここが風呂場なのをいいことに、思いきり精液をぶちまけてしまった。

それにしても、すごい量だ。

【桐葉】「……」

【桐葉】「中を……」

【孝平】「ん?」

【桐葉】「中を……汚してもよかったのよ」

……。

桐葉は、少しすねたように言った。

PTAが聞いたら激怒しそうな問題発言だった。

【孝平】「んなこと言うと、本当に出すぞ」

【桐葉】「構わないわ」

【桐葉】「貴方が望むなら」

なんだって今日は、こんなにしおらしいんだろう。

そのくせ、男の欲望をうまい具合に焚きつけてくる。

俺は、彼女の手の中で踊らされてるだけなのか。

……まあ、俺自身が喜んで踊ってるわけだけど。

【孝平】「桐葉……」

俺は桐葉を抱きしめてから、その場に優しく押し倒した。

【桐葉】「あぁ……」

風呂場の床は、シャワーで十分に温まっていた。

まだ硬さを失っていないペニスを、そっと陰部に押し当てる。

【桐葉】「キス、して」

【孝平】「ん……」

かぶりつくように、唇を奪う。

とろけるように熱い舌が、俺の口内にするりと入ってきた。

【桐葉】「ん、んん……んちゅぅ、ちゅっ」

絶え間なくキスしながら、膣口に亀頭をねじ込む。

ゼリーみたいにぬるぬるとしたそこは、すでに愛液が溢れている。

【孝平】「……行くよ」

両脚を抱え、腰を沈めていく。

ペニスは硬さを増し、さらに奥を目指していった。

【桐葉】「んく、んっ……あぁ、はぁ……」

桐葉の脚が、俺の腰に絡む。

彼女の舌が歯茎を伝い、たっぷりと唾液を残していく。

【孝平】「身体、つらくない?」

【桐葉】「いいえ……」

【桐葉】「もっと……もっと来て」

ぬぷぷぷ……ずぶっ……

この角度だと、さっきよりも深く入る。

すでにペニスは、桐葉の中で快感に身を震わせていた。

さっきはあれだけ出したくせに、まるで衰えないところが恐ろしい。

【孝平】「う……気持ちいい……」

【桐葉】「私も……」

【桐葉】「あ……すごく熱い」

まだ全部入っていないのに、桐葉の腰は早くも動いている。

【孝平】「かわいいな……桐葉は」

じっと顔を見ると、桐葉は恥ずかしそうにそっぽを向いた。

【桐葉】「そんな風に、じろじろと見ないで」

【孝平】「嫌だ」

【孝平】「見ていたいんだ、桐葉が感じてる時の顔を」

【桐葉】「……っ」

【桐葉】「悪趣味だわ……」

【孝平】「悪趣味でけっこう」

ずぶずぶと腰を押しつけながら、じっと見つめる。

どういうわけか、あそこがビクンビクンと反応してきた。

【孝平】「……やっぱり感じてる」

【桐葉】「し……しかたないのよ」

【桐葉】「ああんっ……!」

最深部に辿り着いた瞬間、俺は大きく腰をグラインドさせた。

狭い膣内を、俺のペニスがぐりぐりとかき回していく。

こすれて充血した秘肉は、さっきよりもきつく俺を締め上げた。

【桐葉】「はぁ、ひゃんっ、やっ……あぁ、ひあぁっ」

腰の動きとともに、乳房もたぷたぷと揺れる。

その双丘を、強くわし掴んだ。

【桐葉】「ひあっ、あん、ああぁっ」

【桐葉】「もっと、もっと強く抱いてっ……」

桐葉は飽くことなく、俺を求め続ける。

今までにない激しさだった。

身も心も、すべてが無防備だ。

【桐葉】「あ……お腹に、あたって……あぁ、やぁっ」

【孝平】「桐葉の中、すごく……ぐちゅぐちゅしてる」

【桐葉】「だって……感じてしまうの……貴方に、触れられると……」

【桐葉】「んく、あぁ、はあぁっ、あふん……っ」

誰かに求められると、こんなに満たされた気持ちになるんだ。

今までずっと、孤独だったわけじゃない。

なのに、桐葉といると、二人でいることの喜びを強く感じる。

この人を好きになって、本当によかったと思う。

【孝平】「桐葉、大好きだ……」

ちゅっ。

ちゅぱっ。

その濡れた唇に、何度もキスをする。

この溢れる気持ちを、どうやって表現すればいいのか。

【孝平】「好きだ」

【孝平】「……どこにも行くな」

【桐葉】「……っ」

桐葉は俺の首もとに顔を埋めた。

背中に回した手に、ぎゅっと力を込めて。

【桐葉】「う……うぅ……あぁっ」

【桐葉】「お願い……私を……つかまえていて」

【桐葉】「貴方のそばで……」

【孝平】「絶対に離さない」

【孝平】「ずっとずっと、お前のそばにいるから……」

【桐葉】「ああぁ……っ」

桐葉の切ない声が、耳もとに浮遊した。

これ以上ないほど強い力で、抱きしめ合う。

密着した性器をこすりつけ合い、二人で同じ高みを目指していく。

【桐葉】「あぁ、また……あふぁ、ひあああぁつ」

ぬぷううっ……ずぷっ! ぬちゅぅ!

腰を打ちつける音が響いている。

ペニスが奥に届くたびに、下腹部がジンジンと熱くなる。

【孝平】「くぁっ……」

膣口が一定のリズムで締まり、俺は思わず呻いた。

こんな風にされたら、もうどうやったって辛抱できそうにない。

【孝平】「桐葉、もう少し力を抜いてくれ」

【桐葉】「で、できない……っ」

【孝平】「息を吐いて、力を抜くんだ」

【桐葉】「だって……できないの……あぁ、はあぁっ」

力を抜くどころか、膣内はどんどん狭くなるばかりだ。

俺は歯を食いしばって、腰を動かすことに集中した。

【桐葉】「はぁぁっ、あぁ、貴方の……動いてる」

【桐葉】「私の中で、いっぱい、動いて……るっ……」

さらに密着させようと、桐葉の脚が強く絡みついてくる。

結合部が熱い。

だんだん視界がぼやけてきた。

全身の血が、下半身へと集まっていくようだ。

【桐葉】「ねえ、熱い、ああぁ……あぁ、かき回されてるっ……」

【桐葉】「お願い、私の中で……お願い……」

【孝平】「……わかった」

俺は息を吸ってから、ずぶずぶとペニスを激しく出し入れする。

高みはもうすぐそこだった。

【桐葉】「はあぁ、いい、ああぁっ……すごく……あああああぁっ」

【桐葉】「ふあああぁ、また、来る……んはぁ、あふああああっ」

全身が快感で支配される。

腰を突き上げ、さらに奥の奥へと突き進む。

【桐葉】「はああぁ、来ちゃう、あぁ、ねえ、ああああぁっ、来るうううっ」

【孝平】「俺も、俺もだ……っ」

【桐葉】「ねえ、一緒に……あぁ、一緒に、いきたいのっ……ああああんっ」

【孝平】「……一緒に行こう……っ」

【桐葉】「んはああぁ、ふあああぁ、あっ、いくっ……いくうぅぅっ、ああっああああっ」

汗に濡れた腰を打ちつけ、一気に絶頂へと向かう。

強く強く、桐葉を抱きしめた。

【孝平】「あぁ……!」

【桐葉】「い、いく……っ……あああああっ……ひあああぁ、くっはああああぁっ!」

びゅるうう! びゅくっ、ずぴゅうううう!

【桐葉】「あ……ああああ……んはあぁ、ふあああぁ……っ」

激しい射精感が俺を襲った。

中を目がけて、たまっていた精を思いきり放出する。

さっきよりも長く、力強い射精だった。

【孝平】「うぅ……はぁ、はぁ……」

二人はつながったまま、しばらく抱き合う。

桐葉の中は、ビクビクと動き続けていた。

まだゆるやかに絶頂が続いているらしい。

【桐葉】「ん……はぁ……あっ……」

俺の背中に絡まっていた脚が、少しずつほどけていく。

だが、依然として桐葉は、俺にがっしりとしがみついていた。

その力はますます強くなるばかりだ。

【孝平】「桐葉、大丈夫か?」

【桐葉】「ん……」

【孝平】「そんなに強くしがみつかなくても、どこにも行かないから」

【桐葉】「……」

ぎゅっ。

首が絞まりそうだ。

【桐葉】「私の中……貴方ので溢れてる」

【孝平】「またいっぱい出しちゃったな」

【桐葉】「……ええ」

膣内は、精液と愛液が混ざってたいへんなことになっている。

少しだけペニスを引き抜くと、二人の体液がどろりと漏れた。

【桐葉】「まだ駄目」

【桐葉】「まだこうしていて」

桐葉は俺を放さない。

まるで、雷に怯える子供のように。

【孝平】「大丈夫だって」

【孝平】「今日はずっと一緒にいるって約束したろ?」

そう言うと、桐葉は小さく息を吐いた。

【桐葉】「でも……ずっとはいられないわ」

【孝平】「そりゃまあ、いつかは帰らなきゃいけないけど」

【桐葉】「……」

【孝平】「もちろん、俺だってずっと一緒にいたい」

【孝平】「今は無理かもしれないけどさ、いつか……」

近い将来、学校を卒業して寮を出たら。

桐葉と一緒に暮らしたい。

同じ時間をもっと共有できたらいいな、と思う。

いつ叶うかもわからない、小さな夢だけど。

【桐葉】「……わかってる」

桐葉は遠くを見た。

俺はそのまなざしに、不安の陰影を見たような気がした。

これ以上ないほど、近くにいるのに。

こんなにきつく抱き合っているのに。

どうしてだろう。

彼女の不安が、俺の心にも入り込んでくるようだ。

幸せなはずなのに。

ずっと、何かが引っかかっている。

何度肌を重ねても、その染みのような何かは払拭されない。

【孝平】「桐葉、身体を洗ってやろうか?」

俺は努めて明るい声を出した。

【孝平】「今日は大サービスで、髪も洗ってやるぞ」

【桐葉】「ありがとう」

小さくつぶやいてから、桐葉は俺を見た。

そして、キス。

【孝平】「んっ……ちゅ……」

【桐葉】「ちゅ……んっ、ふぅ」

触れ合うだけのキスから、貪り合うようなキスへ。

何度も何度も舌を絡め合った。

足りないものを補い合うかのように。

二つを一つにするかのように。

俺たちはつながったまま、ずっとキスを繰り返していた。

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