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//August 9//

夏休み中盤戦ともなると、生徒会の仕事は多忙を極めてくる。

文化祭は9月13日と14日。

あと一ヶ月くらいしか時間がない。

よって、毎日が修羅場状態だ。

【瑛里華】「あら? どうしてこの広告スペースが空いてるの?」

【白】「そこは、まだ承認待ちなんです」

【瑛里華】「まずいわ、印刷所にせっつかれてるのよ」

【瑛里華】「悪いけど、もう一度催促してもらえる?」

【白】「わかりました」

【征一郎】「支倉、備品リストは?」【孝平】「今プリントアウトしてます」

【征一郎】「実行委員が追加で発注をかけたいんだそうだ」

【征一郎】「もう一度修正してもらえるか」

げげっ。

【征一郎】「悪いな」

【孝平】「いえ、すぐ直します」

泣き言なんて言ってる場合じゃない。

俺以外のみんなは、俺よりずっと責任のある仕事をこなしている。

せめて足手まといにならないようにするだけだ。

【伊織】「ただいまー」

【白】「お帰りなさいませ」

外出していた会長が戻ってきた。

【伊織】「あー疲れた」

【征一郎】「どうだった?」

【伊織】「まあ、おおむねいつも通りだよ」

【伊織】「お偉方が、今年の文化祭も期待してるからね、だってさ」

挨拶回りは延々と続いた。

副理事長、学院長、島の商工会会長……などなど。

たいそうな肩書きをもったおっさんに、次々と紹介され、挨拶していく。

そんな人たちと口を利いている自分にも驚いたが、一番驚いたのは──

会長の振る舞いだった。

少しも気取らぬ態度で敬語を操り、笑いを取り、相手を立て、場をきれいに収めていく。

目立つ仕事を会長に任せていた、東儀先輩の気持ちがわかった。

会長って人は、やっぱり並じゃない。

【征一郎】「あの会長は、おまえのことを買っているからな」

【伊織】「まあね」

大して嬉しくもなさそうに言う。

【征一郎】「お偉方に気に入られるのは、悪いことではないだろう?」

【伊織】「別に偉くもなんともないよ」

【伊織】「忍法が使えたり、透視ができたりすればちょっとは尊敬できるけど」

【征一郎】「そうなると、世の中の大半が尊敬に値しない人間ということになるぞ」

東儀先輩は呆れたように言った。

【瑛里華】「兄さん、そこの書類に全部ハンコ押してといてね」

【瑛里華】「それが終わったら、広告主にお礼の電話を差し上げること」

【伊織】「はいはい」

ジリリリリリ ジリリリリリ

【白】「はい、監督生室です」

【白】「……はい、千堂ですね。少々お待ちください」

【白】「伊織先輩、武田先生からお電話です」

……武田先生?

樹木医の武田先生のことだろうか。

【伊織】「ああ、回して」

【伊織】「お電話替わりました。千堂です」

俺はリストを修正しつつ、そちらにも耳をそばだてた。

先日、会長は武田先生にケヤキのことを報告してくれると言った。

何かいいアドバイスがもらえるかもしれない。

【伊織】「……はい。そうですか」

【伊織】「いえ、こちらこそ大変お世話になりました」

【伊織】「では業者と相談して、日程を決めておきます」

【伊織】「……はい、失礼します」

静かに電話を切る。

俺は会長を見た。

【伊織】「……ふぅ」

【伊織】「支倉君」

【孝平】「はい」

立ち上がり、会長の席へと駆け寄る。

【孝平】「樹木医の先生だったんですか?」

【伊織】「うん、そうなんだけどね」

一度言葉を切ってから、会長はまっすぐに俺を見据えた。

【伊織】「やっぱり切ることになったよ。あのケヤキ」

【孝平】「……え?」

【征一郎】「……っ」

【白】「……」

【瑛里華】「……」

室内が、静かになる。

俺はしばらく言葉を発することができなかった。

【孝平】「えっ、ど、どういうことですか?」

【伊織】「言葉の通りだよ」

【伊織】「あの木に回復の見込みはない。だから切る」

【伊織】「悪いね。期待に沿えなくて」

【孝平】「ちょっと待ってください」

俺は身を乗り出した。

そんな簡単に、結論を出していいことなのか?

だって、ちゃんと芽吹いたじゃないか。

水はけをよくして、肥料をやって、消毒して。

元気になりますようにって、みんなで祈ってきたじゃないか。

なのに──

【伊織】「そんなに怖い顔しないでくれよ」

【伊織】「俺だって、切らないに越したことはなかったんだからさ」

【孝平】「会長、本当に、ちゃんと先生に診てもらえたんでしょうか?」

【孝平】「ちゃんと芽が生えたとこ、診てもらえたんでしょうか」

【伊織】「やだなあ、俺がヤブ医者を連れてきたとでも?」

【孝平】「そういうことじゃなくて……」

【伊織】「これは決定事項なんだよ、支倉君」

静かに、でも断定的な口調で会長は言った。

【伊織】「君たちがあのケヤキを大切にしてる気持ちはわかる」

【伊織】「でも俺は、あのケヤキ以上に寮生たちの安全を守りたい」

【孝平】「……倒れる、ってことですか?」

【伊織】「そうだ」

【孝平】「でも、今すぐにボキっと折れるわけじゃないでしょう?」

【孝平】「まだ時間はあるはずです。きっと、回復の手立てだって」

【伊織】「台風が来ても?」

俺の台詞を遮った。

【伊織】「たとえば9月になって、戦後最大級レベルの台風がやって来たとしても?」

【伊織】「それでも君は、まだ時間はあるはずだなんて言えるのか?」

【伊織】「もし木が倒れて寮生に怪我人が出たら、どう責任を取ってもらえるんだろう」

【孝平】「……っ」

言葉を失った。

そんなことを言われたら、何も言い返せない。

……。

だが、会長の言葉がすべてだった。

何を最優先すべきか。

寮生たちにとって一番大切なことは何か。

それは、俺たちの意地じゃない。

ロマンチックな言い伝えでも、伝統でもない。

寮生のみんなが、安全な生活を送れること。

それが大前提だ。

……。

かなでさんの顔がよぎる。

空から羽根が落ちてきて、顔を上げた時のあの表情。

初々しい緑の芽を見つけた時の、あの笑顔。

「ケヤキの世話は名誉なこと」だと話してくれた時の、あの誇らしげな声。

【伊織】「あのまま放置しておくと、危険なんだ」

【伊織】「わかってもらえるか」

【孝平】「……」

ただ、うなずくことしかできなかった。

生徒会の仕事が終わり、中庭にやって来た。

腐葉土を混ぜた、新しい土を踏みしめる。

そして、ケヤキを見上げた。

せっかくここまで頑張ってきたのに。

ケヤキは確かに、俺たちの気持ちに応えてくれたのに。

【孝平】「……」

朽ちかけた樹皮と、腐朽した根。

からからに乾いた枝に手を触れた。

本当は、もうどうしようもないところまで来ていた。

生命の灯火は消える寸前だった。

心のどこかでは、わかっていたのだ。

俺たちのやっていることは、延命措置でしかないということに。

完全にケヤキを蘇らせるなんて、不可能に近いということに。

俺は、最初から諦めていたのだろうか。

……。

違う。

諦めの気持ちがあったことは否定できないが、それでも希望は持っていた。

もしかしたら、もしかするんじゃないかって。

かなでさんと俺の願いがミラクルを起こすかもしれないって。

……だけど、結局はどうすることもできなかった。

すべてが無になってしまった。

【孝平】「……ふぅ」

かなでさんには、なんて説明したらいいんだろう。

残酷な役割だと思う。

でも、俺自身が伝えなくてはならないのだ。

かなでさんの、恋人として。

いや……。

生徒会役員として、だ。

【かなで】「あれ? こーへー?」

宵闇が迫り、外灯がともり始めた頃。

中庭にかなでさんがやって来た。

手にはバケツと肥料。

それに、シャベル。

こんなに遅い時間に作業を進めようとしていたのか。

【かなで】「どーしたの? ぼんやりしちゃって」

【かなで】「あれれ? もしかしてわたしのこと、待っててくれたとか?」

【孝平】「はい」

その通りだった。

かなでさんが来るまで、ずっと一人で考えてた。

誰一人として傷つかない方法を。

みんなが納得できる方法を。

……。

もちろん、答えは出ないままだ。

【かなで】「あはは~、ありがとね。待っててくれて」

【孝平】「……」

【かなで】「?」

【かなで】「ねえ、ほんとにどーしたの?」

【かなで】「親とはぐれたカルガモみたいな顔してるよ?」

そう言って、かなでさんは荷物を地面に置いた。

【かなで】「そうそう、さっき、また女子たちにケヤキのこと聞かれちゃった」

【かなで】「もう署名運動してるグループもあるらしいんだって」

【かなで】「すごいよね、恋する乙女たちのラブラブパワーは」

かなでさんの顔をまともに見ることができない。

笑顔を浮かべているであろうその顔が、悲しみに染まるのを見たくなかった。

【かなで】「……?」

【かなで】「こーへー、ちゃんとわたしを見て」

かなでさんは両手を俺の頬に添えた。

大きな目が、俺をまっすぐに見ている。

そらすことも適わないほど、視線で射抜いてくる。

【かなで】「ちゃんと言って」

【かなで】「でないと怒るよ」

【孝平】「……っ」

もうこれ以上、黙っていることはできない。

俺は、俺なりの責任を果たさなくてはならないのだ。

生徒会役員として。

【孝平】「……生徒会からの、最終通告です」

【かなで】「え?」

【孝平】「8月中に、ケヤキを切ります」

はっきりと、そう言った。

【かなで】「……」

かなでさんの手が、ゆっくりと俺の頬から離れる。

目はそらさない。

ただ、さっきまで見せてくれた人なつっこい笑顔は、そこにはなかった。

心臓が押し潰されるような痛み。

だが、どこか冷静な自分がいた。

冷静に、かなでさんの震える唇を見ている。

【かなで】「どう……して?」

【孝平】「もう、回復の見込みはないそうです」

【孝平】「このまま放置すると、倒れる可能性が高い」

【孝平】「台風シーズンが来る前に、早めに切り倒した方がいいということになりました」

【かなで】「……嫌だ」

【かなで】「回復の見込みがないなんて嘘だよ」

【かなで】「だって、芽が出たじゃない」

【かなで】「まだ生きようとしてるんだってば!」

俺だってそう思ってた。

でも──

【孝平】「長い目で見れば、いつかは元気になるかもしれない」

【孝平】「……でも、その前に倒れる可能性の方が高いんです」

【孝平】「何かがあってからじゃ、遅いんです」

まるで他人事のような口振りだと思った。

昨日までは、あんなに二人で頑張ってきたのに。

かなでさんを裏切ってるような気分になる。

いや、事実そういうことになるのかもしれなかった。

……。

長い沈黙が横たわる。

かなでさんは、失望しているのだ。

この俺に対して。

何もできなかった俺に対して。

【かなで】「……わたし、やっぱり納得できない」

【かなで】「みんなだって望んでない」

【かなで】「みんなが望んでないことは、寮長として承認できないよ」

【孝平】「かなでさん……」

【かなで】「ごめん」

【かなで】「今は、落ち着いてこーへーとお話できない」

【かなで】「一人にして……」

そう言って、かなでさんは俺に背を向けた。

明らかな拒絶の意。

俺は、かなでさんに手を伸ばしかけ──

【孝平】「……っ」

そのまま、中庭をあとにした。

//August 10//

翌日。

監督生室には、会長と副会長がいた。

【伊織】「……ふうん。やっぱりね」

【伊織】「まあ、そうなるんじゃないかとは思ってたけどさ」

かなでさんに生徒会からの最終通告をしたことを、会長に伝えた。

伐採に関して、寮長の返事としてはもちろんノーだ。

寮生たちの本意ではないことも、合わせて報告する。

【伊織】「君には、嫌な役回りをさせてしまったね」

【孝平】「いえ。自分で決めたことですから」

たとえ失望されても、拒絶されても。

俺以外の誰かに、この役回りを任せることはできなかった。

【伊織】「さて、困ったな」

あまり困ってなさそうな口調で言う。

生徒会の意向は覆さないという、確固たる意志があるからだろう。

……。

ああ、そうか。

一番嫌な役回りを買って出てるのは、この人なのかもしれない。

ふと、そんなことを思った。

【伊織】「とにかく、8月中にはなんとか業者に切り倒してもらわないといけないんだ」

【伊織】「俺としては、穏便に済ませたいところではあるんだけど……」

【伊織】「支倉君はどう思う?」

【孝平】「俺は……」

一番の懸念事項は、もちろんかなでさんのことだ。

もし正式に伐採が決まったことを寮生たちが知ったら。

最終的には、かなでさんに非難の声が集まる可能性がある。

「約束を守れない寮長」だとか、そんな風に責められるのだけは耐えられなかった。

じゃあ、どうすればいい?

かなでさんが非難されず、なおかつみんなに納得してもらう方法。

考えろ。

きっといい手があるはずだ。

……。

そう。

たとえば、非難が集まる矛先を変えるとか。

かなでさんさえ悪者にならなければいいのだから。

【孝平】「……こうしましょう」

【孝平】「俺が生徒会役員を代表して、寮生のみんなに伝えます」

【伊織】「なんて?」

【孝平】「生徒会主催のイベントとして、ケヤキ伐採式を行うと伝えるんです」

【孝平】「寿命を迎えたケヤキを送り出す、記念式として」

【伊織】「ふーむ……」

わかってる。

そんなのは、ただ言い方を変えただけのことだ。

どのみち、寮のシンボルがなくなることに変わりはない。

【伊織】「それでみんなが納得するのかな?」

【孝平】「それは、正直わかりません」

【孝平】「でも……」

少なくとも、かなでさんに非難の目は向かない。

非難が集まるのは生徒会役員代表である、この俺だ。

俺の目的は、ただそれだけだった。

【伊織】「……」

【伊織】「よし、わかった。支倉君の案に乗ってみよう」

【伊織】「明日の夜にでも、寮生たちを談話室に集めてくれ」

【孝平】「わかりました」

【瑛里華】「明日?」

【瑛里華】「ずいぶん早いのね」

【伊織】「早いに越したことはないだろ?」

【伊織】「天気が安定しているうちに手を打っておかないとね」

【伊織】「あ、ちなみに瑛里華は明日来なくていいから」

【瑛里華】「……どうして?」

【伊織】「大人数でぞろぞろ行ったって意味ないし、文化祭の仕事もあるだろ」

【伊織】「明日は支倉君と俺だけで十分だ」

【伊織】「ね? 支倉君」

【孝平】「……はあ」

ていうか、会長も来る気だったんだ。

まあ、俺だけじゃいろいろと心配だろうから無理もないけれど。

しかし。

自分から提案しておいてなんだが、気が重かった。

話がどう転んでも、またかなでさんを悲しませることになる。

悲しませるために頑張ってきたんじゃないのに。

……うまくいかないものだ。

【孝平】「じゃあ俺、明日の件を寮長に伝えてきます」

【伊織】「ああ、頼んだよ」

【瑛里華】「……」

【瑛里華】「支倉くんっ」

監督生棟を出たところで、呼び止められた。

副会長だった。

【孝平】「どうした?」

【瑛里華】「その……」

ゆっくりと俺のもとに歩いてくる。

長いまつげを伏せ、ためらいがちに口を開いた。

【瑛里華】「力になれなくて、ごめんなさい」

【瑛里華】「支倉くんたちが、あんなにケヤキのために頑張ってたのに」

【孝平】「なんで副会長が謝るんだよ」

【瑛里華】「……だって」

【孝平】「誰がいいとか悪いとか、そういう話じゃないだろ?」

ケヤキの木が倒れそうだから、切る。

ただそれだけの一件だった。

【瑛里華】「でも支倉くん、自分を責めてる」

【瑛里華】「違う?」

なんとも返事できない。

【瑛里華】「本当は、最後まで悠木先輩の味方でいたかったんでしょう?」

【瑛里華】「悠木先輩のよき理解者でいたかったはずよ」

【瑛里華】「そうすれば、あなたたちは仲良しのままでいられたんだもの」

副会長が一歩踏み出す。

【瑛里華】「でも、支倉くんはそうしなかった」

【瑛里華】「だから自分を責めてるのよ」

【孝平】「……」

そうなのかもしれない、と思う。

俺はケヤキを切るのには反対だ。

そう言い続けていれば、かなでさんに失望されずに済んだのだろう。

じゃあなぜ、そうしなかった?

なぜかなでさんを説得しようと思った?

【瑛里華】「……自分が、生徒会役員だから?」

【瑛里華】「生徒会役員としての責任を感じたの?」

【孝平】「そんな立派な理由じゃない」

【孝平】「俺はただ、どっちにもいい顔したかったんじゃないのかな」

【孝平】「責めるとしたら、そんな中途半端な自分に対してだ」

そういうことにしてしまおう。

もう今となっては、自分を責める理由なんてどうでもいい。

ただ最後まで、役割を果たさなきゃいけない。

それが、かなでさんにできるせめてもの償いだった。

ゆっくり歩いたつもりだったのに、とうとう寮に辿り着いてしまった。

かなでさんは部屋にいるだろうか。

電話して聞けばいいのだが、その勇気が出なかった。

もし着信拒否されてたらどうしようとか、悪いことばかり考えてしまう。

……。

玄関へと一歩踏み出した。

ドキドキする。

もちろん、あまりいい意味のドキドキではなく。

この緊張は、明日になるとさらに増幅するのだろう。

今夜は眠れそうにない。

……廊下の窓から中庭を覗いて、足を止める。

やはり、というべきか。

かなでさんが立っていた。

【かなで】「……」

静かにドアを開ける。

かなでさんはケヤキと向き合うように佇んでいた。

沈痛な面持ちだ。

かなでさんらしくない、悲しそうな顔。

【かなで】「わたし、その先輩が大好きだった」

【かなで】「このケヤキを、誰よりも大切にしてた」

今の俺と同じように、かなでさんは前寮長を見ていたのだ。

枯れゆくケヤキを慈しむように見つめる、前寮長のことを。

どんな気持ちで、かなでさんはここに立っていたんだろう。

どんな覚悟を持って、寮長になろうと思ったんだろう。

【孝平】「かなでさん」

【かなで】「?」

【かなで】「……こーへー」

俺を見て、またすぐに目を伏せた。

胸の奥がちくりと痛む。

【孝平】「かなでさんにお願いがあって来たんですけど」

【かなで】「お願い?」

【孝平】「はい」

【孝平】「明日の夜、寮生のみんなを談話室に集めてもらえませんか」

【孝平】「もちろん、出席できる人だけでいいんで」

【かなで】「……なんで?」

俺はなるべく表情を崩さずに答えた。

【孝平】「ケヤキのことで、生徒会からみんなに報告があるんです」

【孝平】「詳細は、掲示板の方にも張り出しておきますけど」

【かなで】「……っ」

何を報告するか、それはかなでさんが一番よくわかっていることだ。

悲しそうに、悔しそうに、唇を噛み締めている。

【孝平】「かなでさんも、ぜひ出席してください」

【孝平】「寮長として」

【かなで】「……わかった」

そう言って、背を向けた。

かなでさんが遠い。

1メートルぐらいしか離れてないのに。

【かなで】「心配しなくてもだいじょーぶ」

【かなで】「わたしはずっと、こーへーだけのものだよ」

今抱きしめたら、かなでさんはどうするだろう。

抱きしめたい。

でも、俺はもうそんな権利も失ってしまったのだろうか。

//August 11//

その夜。

談話室には、多くの寮生たちが集まっていた。

もちろん、かなでさんもいる。

こうやって招集をかけるのは珍しいことなので、みんなどことなく色めき立っていた。

【孝平】「……」

緊張は最高潮に達していた。

俺が発言することで、今はまだ和やかな談話室のムードは一変する。

大きな非難が集まるはずだ。

それでも。

やり通さなくてはならない。

俺が決めたことなのだ。

【伊織】「そんなに緊張するなよ」

会長がぽんぽんと俺の肩を叩く。

【伊織】「5万人の大観衆の前でスピーチするわけじゃないんだから」

【孝平】「俺にとっては、それ以上です」

小声で答えた。

やっぱり会長がいてくれてよかった。

この人の前でみっともない真似はできない。

自然と背筋が伸びる。

【かなで】「……」

かなでさんと目が合う。

そこに非難がましい色はない。

ただただ悲しそうで、だからこそ逆につらかった。

【伊織】「そろそろ始めようか」

【孝平】「はい」

まずは深呼吸。

それからテレビの前に立ち、みんなに呼びかけた。

【孝平】「これより、生徒会から大事な報告があります」

喧噪がやみ、みんなの視線がこちらに集中した。

思わず気圧されそうになる。

呼吸を整えてから、続けた。

【孝平】「……御存じの方もいるかと思いますが」

【孝平】「かねてより樹病を患っていた穂坂ケヤキが、この度専門医から回復不能との診断を受けました」

みんなが顔を見合わせる。

まるで初耳だった人も多いようで、騒然とした空気になった。

【孝平】「そこで、来る8月30日土曜日」

【孝平】「生徒会主催による、穂坂ケヤキ伐採の記念式典を開催したいと思います」

【女子生徒A】「伐採っ?」

【女子生徒B】「ケヤキを切るってことですか?」

早くも質疑の声が飛んだ。

【孝平】「穂坂ケヤキは、もうこれ以上成長を望むことはできません」

【孝平】「よって、切ることになりました」

ざわめきが大きくなる。

非難をあらわにする人。

泣きそうな顔になる人。

無反応な人。

リアクションはいろいろだ。

【女子生徒C】「それって、絶対に切らなきゃいけないんですか?」

【男子生徒A】「なんとか残す方法ないのか?」

【孝平】「……残す方法は、ありません」

【孝平】「すでに倒壊の危険性があります。決定事項です」

【女子生徒B】「待ってください。寮長がかわいそうだと思います!」

【かなで】「……っ」

【女子生徒B】「毎日毎日一生懸命世話をして、頑張ってきたんです」

【女子生徒B】「そういう努力を無駄にしちゃうんですか?」

【女子生徒C】「そーだよそーだよ!」

【女子生徒A】「寮長もなんとか言ってやってください!」

【伊織】「……」

会長が一歩前に出ようとする。

それをそっと制して、俺はかなでさんを見た。

【女子生徒A】「寮長っ」

【かなで】「……わ、わたしも」

【かなで】「わたしも、反対です」

はっきりと、そう告げた。

【かなで】「穂坂ケヤキは、寮に住むみんなが守ってきた木です」

【かなで】「寮長として、伐採を認めるわけにはいきません」

声援の声が飛ぶ。その声を聞いて、俺は安堵した。

よかった。かなでさんの味方はたくさんいる。

【孝平】「生徒会としては、安全性が確保できないものを放置するわけにはいきません」

【孝平】「ここで大切なのは、ケヤキそのものよりも寮生たちの安全です」

【かなで】「……!」

かなでさんはじっと俺を見つめていた。

なんでこんなことになってしまったのか。

そう思っているのだろう。

俺だって、ずっと同じことを思ってる。

【女子生徒A】「あんなに大きな木が、そう簡単に倒れるわけないと思いますけど」

【男子生徒B】「だよな。まだ元気そうだし」

【男子生徒C】「そうかぁ? 葉っぱ生えてないぞ?」

【女子生徒C】「それは……そうだけど」

……まずいな。

このままだと流れが変わってしまう。

【伊織】「あとはすべて水掛け論だ」

【伊織】「引き際を見極めた方がいい」

会長が小声で言った。

引き際と言われても、なかなか難しい。

【孝平】「……もう一度繰り返します」

【孝平】「8月30日土曜日、穂坂ケヤキ伐採の記念式典を開催する予定です」

【孝平】「なるべく多くの人が参加することを望みます」

【孝平】「以上」

簡潔にまとめてから、俺はその場から移動した。

この大人数を同時に納得させることは困難だ。

納得させることが第一の目的ではないにせよ。

……本当に、難しい。

生徒会という仕事の複雑さを、初めて思い知った気がした。

【伊織】「ごめんね、悠木姉」

【かなで】「……」

会長は肩をすくめ、俺を見た。

【孝平】「かなでさん、俺……」

【かなで】「わたし、反対だから」

【かなで】「絶対に反対だからっ」

【孝平】「かなでさんっ」

ぱたぱたぱたぱたっ

かなでさんは涙を浮かべて、談話室を出て行ってしまう。

みんなも何事かというような顔で、その姿を見送っていた。

【伊織】「追いかけていいよ」

【伊織】「あとは、俺がなんとかしとくから」

【孝平】「会長……」

【孝平】「よろしくお願いします」

人混みをかきわけ、走る。

かなでさんを追うために、走った。

あの人の行き先は、聞かなくてもわかる。

【孝平】「かなでさん!」

中庭に続くドアを開け、叫ぶ。

やはりかなでさんは、ここに来ていた。

ケヤキに手をつき、背中を丸めてうつむいている。

【かなで】「う……」

【かなで】「だめ……絶対だめ」

【かなで】「今こーへーの顔見たら、わたしひどいこといっぱい言っちゃう」

声が震えている。

嗚咽を必死にこらえているのだ。

【孝平】「……いいです」

【孝平】「ひどいこと、いっぱい言ってください」

そうされてもいいことを、俺はしたのだ。

【かなで】「……っ」

かなでさんのそばに近づいた。

ただでさえ小さな背中が、よけい小さく見える。

【孝平】「かなでさん」

【かなで】「わかるよ……こーへーの立場だって」

【かなで】「いじわるしてるわけじゃないって、わかってる」

【かなで】「でも……」

かなでさんは、俺の方を振り返った。

【かなで】「それでも、一緒に戦ってほしかった」

【かなで】「最後まで一緒に戦ってほしかったよ」

頬を涙が伝う。

かなでさんは、傷ついてる。

傷つけたのは俺だ。

でも──

【孝平】「何に対して戦うんですか?」

【孝平】「自分の意地のために?」

【かなで】「そうじゃないよ」

【かなで】「みんなの気持ちだってあるでしょ?」

【かなで】「卒業していった先輩たちの気持ちだって……」

【孝平】「気持ちさえあれば、みんなが危険な目に遭ってもいいんですか」

【かなで】「そんなこと言ってない!」

【かなで】「こーへーは? こーへーはいいの?」

【かなで】「このケヤキがなくなっても、こーへーはそれでいいの!?」

【孝平】「いいわけないじゃないですかっ」

【かなで】「……っ」

俺は、かなでさんの肩をつかんだ。

つい力が入ってしまうのを、なんとか制御しながら。

【孝平】「かなでさんと一緒に、一生懸命世話したケヤキなんです」

【孝平】「俺だってかなでさんに負けないくらい、毎日一緒にいたんです」

【孝平】「そんなの、なくなって悲しくないわけないじゃないですかっ」

かなでさんにとって、このケヤキに思い出があるのと同じように。

俺にだって思い出がある。

このケヤキの下で、かなでさんに告白した。

あの時、俺は本当にドキドキしたんだ。

フラれたと思ったけど、自分の気持ちを伝えられて誇らしかった。

【孝平】「……でも、このケヤキはもう生きようとしていない」

【孝平】「もし木が倒れて、誰かが怪我をしたら?」

【孝平】「この木のせいで、誰かが寮生活を送れなくなったら?」

【孝平】「そうしたら……かなでさん、絶対に自分を責めるでしょう?」

【孝平】「絶対に、後悔するはずです。自分が寮長になったことを」

【かなで】「こーへー……」

俺は、そんなかなでさんを見たくなかった。

可能性としては限りなく低いのかもしれない。

でも、ゼロではないのだ。

事故が起こる可能性は。

【孝平】「……かなでさん」

【孝平】「本当に大切なのは、物でも言い伝えでも栄誉でもない」

【孝平】「寮に住むみんなでしょう?」

【かなで】「……」

かなでさんはゆっくりとまばたきをした。

大粒の涙。

まつげが光る。

【かなで】「寮に住む、みんな……」

言いながら、ケヤキを見上げる。

【かなで】「大好きだった先輩の代わりに、この寮とケヤキを守りたかったの」

【かなで】「歴代の寮長みんなの願いが、この子に込められてるから」

【かなで】「……わたし」

【かなで】「この子がもう長くないこと、わかってた」

【かなで】「前寮長の先輩も、きっとわかってたんだよね……」

【かなで】「でも、先輩と、ケヤキを守るって約束したから」

【かなで】「だから、わたしの代でケヤキを失うわけにはいかなかったんだ……」

手の甲で涙をふき、ゆっくりと続けた。

【かなで】「自分勝手な理由だったの」

【かなで】「約束を破る、いい加減な子になりたくなかったの」

【かなで】「今、気づいちゃった……」

自嘲めいた口調で言う。

【かなで】「こーへーのこと、責める資格なんてないよね」

【かなで】「本当ならわたしがみんなにケヤキを切ること、伝えなくちゃいけなかったんだよ……」

だって、わたしが寮長だから。

そうかなでさんは続けた。

【かなで】「……ごめん」

【かなで】「こーへーに嫌な役割を押しつけたんだね、わたし」

【かなで】「ごめん。本当にごめんなさい」

【かなで】「謝って済むことじゃないけど……本当に、ごめんなさい」

【孝平】「俺は、生徒会役員ですから」

【孝平】「ただ自分の仕事をしただけです」

なんて言うと、ちょっとかっこよく聞こえるけど。

実際はドキドキだったし、吐きそうだったし。

あまりスマートとは言えない仕事ぶりだった。

……それに、今になって思うのだ。

俺は、かなでさんの言う通り、最後まで一緒に戦うべきだったんじゃないかと。

それがいいことか悪いことかはわからない。

でも、かなでさんの恋人ならそうするべきだったんじゃないか、って。

思ってみたりもするのだ。

だが結果的に、俺はそうじゃない手段を選んだ。

責任なんてかっこいいものじゃなく、エゴを貫いた。

だからかなでさんが俺に謝る必要なんて、ないんだと思う。

【かなで】「こーへー」

【かなで】「わたしのこと、許してなんて言わない」

【かなで】「……でも、償わせてほしいんだ。寮長としての、わたしのやり方で」

【孝平】「え……?」

【かなで】「自分の手で、ちゃんと最後の幕を引くよ」

【かなで】「だから……見ててほしい」

【かなで】「わたしが、この子を送り出すまでは」

揺るぎのない声で、かなでさんは言った。

もう、戸惑いや憂いは、そこにはない。

寮長としての決意だけがそこにあった。

【孝平】「俺は、ずっとずっとかなでさんのことを見ています」

【孝平】「かなでさんが卒業しても、ずっとです」

それが、俺の決意だ。

【かなで】「……ありがとう」

【かなで】「ありがとう。こーへー」

かなでさんは、俺の手に手を重ねた。

この手を、ずっとつないでいきたい。

たとえ離れてしまったとしても。

俺たちはいつでも、またつなぐことができる。

手を放すことを怖がらなくてもいい。

そう思えることが、嬉しかった。

//August 29//

夏休みも残りあと二日。

ケヤキ伐採を明日に控えた今日、かなでさんと数人の女子たちが談話室に集まっていた。

かなでさんは、真剣な姿勢を示すためか、制服を着込んでいる。

【かなで】「……というわけなんだ」

【かなで】「ごめんね、みんな。約束守れなくて」

【女子生徒A】「そんな、謝らないでください」

【女子生徒B】「そうですよ。寮長は一生懸命やってくれたじゃないですか」

ここ二週間、かなでさんは寮生たちに、ケヤキ伐採の必要性を説明して回っていた。

ケヤキを切るのは、とても悲しいこと。

でもそれは、この寮を維持していくために必要なことでもある。

ケヤキを排除するのではなく、みんなで送り出してあげよう。

かなでさんが断腸の思いで決断を下したことは、寮生たちもよくわかっていた。

ケヤキがなくなることで、一番悲しい思いをするのは寮長。

そんな共通の思いが、ケヤキを切ることへの理解を深めていったのだ。

【女子生徒A】「寮長、元気出してくださいね」

【女子生徒B】「私たち、明日は笑顔でケヤキを見送ります」

【かなで】「みんな……ありがとう」

【孝平】「かなでさん、お疲れ様でした」

寮生たちへの最後の説得を終え、かなでさんは少々お疲れ気味だ。

寮生たち一人ひとりに、納得してもらうまで話し合う。

それはかなでさん自身が決めた、寮長としての「責任」だった。

俺はそんなかなでさんを、ずっと見守り続けていたのだ。

【かなで】「こーへーも、お疲れ様」

【かなで】「いつも一緒にいてくれてありがとうね」

【孝平】「いえ、俺にはそれぐらいしかできませんから」

ふっと、肩の力が抜けて楽になる。

あとは明日という日を迎えるだけだ。

【かなで】「夏休み、早かったね」

【孝平】「ええ」

【かなで】「ちゃんと満喫した?」

【孝平】「まあ、ある意味では」

遊び三昧というわけにはいかなかったが、それなりに充実していた。

欲を言えば、もう少しかなでさんと夏休みっぽいことをしたかったが。

【孝平】「そういや、かなでさんにとっては最後の夏休みだったんですよね」

【かなで】「あ、ほんとだ」

【かなで】「すっかり忘れてたよ」

【孝平】「忘れないでください」

【かなで】「ふふ。でもこーへーのおかげで、めいっぱい青春できたよ」

【孝平】「そうかな……」

彼氏としては、心残りを覚えてしまう。

本当に、このまま夏休みを終えてしまっていいのだろうか?

……。

【孝平】「かなでさん、このあとの予定は?」

【かなで】「ん? ……今日はもう、何もないかな」

【かなで】「強いて言うなら、放置してる課題が気になるくらい」

【孝平】「それ、もう数時間だけ放置してもらえませんか」

【かなで】「え」

俺は立ち上がった。

夏休みはあと少し。

俺はまだ、かなでさんとの肝心な約束を果たしていない。

【孝平】「かなでさん、デートしましょう」

【かなで】「ふえ?」

【孝平】「今まで頑張ってきたんだから、半日くらい遊んでもバチはあたりません」

【孝平】「ね?」

【かなで】「……う、うんっ」

【かなで】「でも、どこに行くの?」

【孝平】「どこに行きたいですか?」

逆に聞いてみた。

もう午後を回ってしまったので、行けるところは限られている。

【かなで】「じゃあ、じゃあ」

【かなで】「夏休みっぽいところがいい」

また抽象的な。

【孝平】「墓参りとか?」

【かなで】「ちーがーう」

【かなで】「夏休みといえば!」

【孝平】「夏休みといえば……?」

【かなで】「そう! それ!」

【かなで】「やっほーーーーーー!」

……ということになるわけだ。

【かなで】「ほら、こーへーも一緒にっ」

【孝平】「いや、俺はいいですから」

8月下旬の海。

まだ暑いには暑いが、微妙にクラゲが気になる時期だ。

【かなで】「こーへー」

【孝平】「はい?」

【かなで】「これ塗って」

小さなボトルを渡された。

日焼け止めだった。

【かなで】「わたしも日々学習するわけよ」

【孝平】「なるほど」

前回の失敗をふまえたわけだ。

【かなで】「たっぷり塗っちゃってね」

【孝平】「了解です」

かなでさんはビニールシートに座り、俺に背中を向けた。

まだ微妙に、日焼けの跡が残っている。

日焼け止めを手に出し、背中にたっぷりと塗っていった。

【かなで】「ひぁんっ」

【孝平】「どうしました?」

【かなで】「く、くすぐったいんだけど」

【孝平】「そんなこと言われても」

【かなで】「……ふぁっ!」

【孝平】「落ち着いてください」

【かなで】「わざとくすぐったくしてるでしょ!」

【孝平】「ただ塗ってるだけじゃないですか」

なのにかなでさんは、誤解を招くような色っぽい声を出してくる。

こっちまでドキドキしてくるのでやめてほしい。

【孝平】「もうちょっと辛抱してくださいね」

【かなで】「も、もういい」

【孝平】「あっ」

まだ塗り終わってもいないのに、かなでさんは早くも脱走した。

そのまま、ざばざばと波打ち際まで走っていく。

【孝平】「また日焼けしても知りませんよっ」

【かなで】「そしたらアロエジェル塗ってねー」

……まったく。

かなでさんはまさに水を得た魚のごとく、楽しそうに泳いでいる。

ようやく夏休みらしくなってきた。

波打ち際で遊んだあと、二人で砂浜を散歩する。

来る時間が遅かったので、もう日が傾いてきてしまった。

【かなで】「おっ、カメノテ発見!」

【かなで】「巻き貝だ!」

【かなで】「待てー! フナムシ!」

【孝平】「……」

俺は、昔のことを思い出していた。

この島に住んでいた頃のこと。

よくこうやって、一緒に海で遊んでた。

普通の女の子なら怖がるような虫や海生物も、かなでさんはへっちゃらだった。

カニも魚もカブトムシも、平気でつかむ。

一緒に男の子みたいな遊びができる女友達は、けっこう貴重な存在だった。

……そう考えると。

かなでさんって、あの頃からあんまり変わってないかもしれない。

いろんな意味で。

【かなで】「……何?」

【孝平】「はい?」

【かなで】「今、ヘンなとこ凝視してなかった?」

【孝平】「してません」

胸は、ヘンなところじゃない。

【かなで】「いっとくけど、これでも年々成長してるんだから」

【孝平】「俺は何も言ってないのに」

【かなで】「はぁ、ひなちゃんぐらいあればなあー」

【かなで】「いや……えりりんぐらいあれば……」

【孝平】「……」

副会長の水着姿を思い出す。

あれは、なんというか、確かに素晴らしいものだった。

【孝平】「まあでも、人それぞれでいいじゃないですか」

【かなで】「慰めてくれるの?」

かなでさんがシナを作る。

【孝平】「そうじゃなくて」

【孝平】「俺は、かなでさんがいいって言ってるんです」

【かなで】「……」

てっきり、ばしばしと背中を叩かれるかと思ったが。

かなでさんは真っ赤な顔を隠すように、俺に背を向けた。

【孝平】「どうしたんですか?」

【かなで】「……困る」

【孝平】「何が?」

【かなで】「こーへーのこと、好き過ぎて困ってるの」

【かなで】「なんとかしてほしいよ、もう」

ふぅ、とため息をつく。

なんとかしてほしいと言われても。

そんなの、俺だってなんとかしてほしい。

俺は、背後からかなでさんを抱きしめた。

【かなで】「……っ」

【かなで】「こーへー、熱いね」

【孝平】「かなでさんも」

【かなで】「日焼けしちゃったのかな」

【孝平】「だからちゃんと、日焼け止めを塗れって言ったのに」

ここは大きな岩の影になっているので、人から見られる心配はない……はず。

おかげで、思いっきり抱きしめることができる。

火照った素肌が触れ合い、鼓動が速まった。

水着姿なので、かなり密着度が高い。

【孝平】「キス、してもいいですか?」

そう尋ねると、かなでさんは何も言わずにうなずいた。

背後から抱きしめたまま、唇を重ねる。

【かなで】「ふぅ……っ」

いきなり舌を絡め合う。

焦らす間もなく、かぶりつくように唇を求め合った。

【かなで】「んちゅぅ、んふ……ちゅぅ」

【かなで】「こーへー……今日はちょっと、せっかちだね」

自分でも、がっついてると思う。

だけど、抱きしめたら止まらなくなってしまった。

【かなで】「キス、したかったの?」

【孝平】「……はい」

【かなで】「えへへ。わたしも」

【かなで】「今、すっごくドキドキしてる」

【かなで】「ん……ふっ……」

かなでさんも積極的にキスを求めてきた。

やけに興奮してしまうのは、どうしてだろう。

場所が場所だからか?

舌と舌が触れ合うごとに、下腹部がジンジンと熱を持つ。

もっともっと、欲しくなる。

【孝平】「かなでさん、俺……」

今すぐに、かなでさんが欲しい。

そう耳元で囁いた。

寮に帰るまでなんて、我慢できそうにない。

自分でも滑稽なほどに欲望が高まっている。

【かなで】「こーへー……つらいの?」

下半身のこわばりを悟ったらしく、俺を見上げた。

【孝平】「はい……」

正直に答える。

こうなってしまったら、かっこつけたって無駄なことだ。

【かなで】「そ、そっか」

【かなで】「じゃあ……なんとかしてあげないとね」

【かなで】「あぁでも、うまくできるかな……」

【孝平】「?」

//H-scenes starts//

【孝平】「う……わっ……!?」

かなでさんは俺の水着に手をかけ、ゆっくりと下ろした。

【かなで】「初めてだから、あんまり自信ないけど……」

【かなで】「痛かったら言ってね?」

上目遣いにそう言ってから、半勃起した俺のペニスを握った。

口を大きく開け、亀頭部分をぱくっと含む。

【孝平】「うぅっ」

温かい粘膜に包まれ、思わず呻いた。

全身の力が抜けていくようだ。

これは、どういう状況なんだろう。

あまりに大胆な行動に、思考回路が停止する。

【かなで】「んっ……ちょっとしょっぱいね」

【かなで】「ふふ、大きい」

ぺろりと唇を舐めてから、再び亀頭をくわえる。

ぬめぬめとした舌がカリ首を一周した。

【かなで】「はむぅ、ん、んちゅっ」

唇をすぼめ、亀頭をがっちりとキープしつつ舌を這わせていく。

荒削りな愛撫ではあるが、そのおぼつかない感じがまたいじらしい。

【かなで】「んふぅ、あむ……んふ……ぺちゃ……ん」

俺のために、かなでさんは一生懸命舌を動かしている。

潮風が吹き、その栗色の髪をなびかせていく。

【かなで】「ん……んくぅ、はむ、ちゅぱ」

舌のざらざらとした部分が、先端を何度も往復する。

不覚にも、俺の腰はがくがくと震えてしまう。

【かなで】「んんっ……どうしたの?」

【孝平】「い、いや、なんでもないです」

もうこうなると、俺に主導権はない。

されるがままになってしまう。

【かなで】「じゅっ、んぷぅ、れろっ……ちゅっ」

亀頭を重点的に責められる。

だんだんと舌の動きが激しくなってきた。

【かなで】「はむぅ、ん……わ、もっと大きくなってきたよ? ……んぁ、ぺちゃ」

唾液をたっぷりと乗せた舌が、先端にまとわりつく。

息が熱い。

俺はたまらず、かなでさんの頭を押さえた。

【かなで】「あむぅ、ん……んちゅうぅ、んぐっ」

【孝平】「あっ……!」

さらに深くペニスをくわえ込まれた。

棹全体が熱いぬめりに包まれる。

身体の中心がジンジンとしびれ、俺は唇を噛み締めた。

【かなで】「ちゅるるっ、んむぅ、んっ、ぺちゃっ」

【かなで】「はぁむ……んん、なんか出てきた……んぁ、ちゅぱぁ」

先端に舌をねじ入れ、先走りの汁をほじくり出している。

苦いのか、かなでさんはわずかに眉根を寄せた。

それでも、ちゅぱちゅぱと吸いつくのをやめない。

頭を前後に揺らし、ペニス全体を愛撫していく。

【かなで】「ずっ……ずちゅ、ちゅぅ、れろっ……んんっ」

愛らしい唇が、俺の猛り狂った肉棒をくわえ込んでいる。

口端から唾液が垂れ、砂の上に落ちていく。

【孝平】「ぁ……かなでさん……っ」

無意識のうちに、俺の腰も動いていた。

口内の粘膜が亀頭を撫で、みっちりと貼りつく。

【かなで】「んぷぅ、んくぅ、あふ……あむぅ、ぺちゃっ、ぬふぅ」

【孝平】「くぁっ……」

【かなで】「ふわっ……ビクビクって、なった」

危うく達してしまいそうになり、下腹部に力を入れ直す。

【かなで】「こーへー、気持ちいい……かな?」

かなでさんはやや不安げな顔で、俺を見上げる。

【かなで】「やり方、ヘンじゃない?」

【孝平】「ヘンじゃないです……最高に気持ちいいですよ」

【かなで】「ん……よかった」

【かなで】「ぺちゃ、んふぅ、あむ、じゅぷ……っ」

安心した様子で、再びペニスにむしゃぶりついてくる。

喉をコクコクと鳴らし、たまった唾液と先走りの汁を飲み干す。

【かなで】「じゅるるっ、ずちゅ、じゅぷぅ」

頬の内側や舌の裏を使い、絶え間ない刺激を与えている。

やがてかなでさんは、激しく頭を前後に動かした。

【かなで】「んぐ、ぐっ、じゅぷっ……じゅぽっ……じゅるっ」

【孝平】「あ……あぁっ」

【かなで】「じゅぷ、ずちゅ、ぺちゃ……じゅるるっ、んぷっ」

かなでさんの動きに合わせて、小刻みに腰を揺らす。

誰に見られているかもわからないのに、欲望を止めることができない。

【かなで】「んっ、んっ、あふっ、んぷぅ、じゅぷっ」

充血して腫れあがったペニスが、かなでさんの口内を蹂躙する。

喉奥まで突っ込んで苦しいだろうに、必死に愛撫を続けてくれる。

その切ない顔を見ていると、ますます興奮してしまうのだ。

【かなで】「んちゅ……我慢しなくても、いいからね……あくっ、んぷっ」

【かなで】「こーへーの好きな時に、出していいから……」

【孝平】「かなでさ……んっ……」

膝が震え、全身が熱を帯びる。

ひたすら腰を動かし、絶頂への階段を上っていく。

【かなで】「じゅぷぅ、うぷっ、ん、じゅるるるっ、ぺちゃ、はむんっ」

【かなで】「ぬぷぅ……くちゅ、じゅっ、ちゅぱ、ずちゅうぅっ、はぁむっ」

【孝平】「あっ……ぅっ……!」

強く亀頭に吸いつかれ、俺は情けない声をあげた。

目の前が真っ白になる。

【かなで】「じゅぷ、じゅっ、ちゅるっ、んぷ……ちゅうぅっ、じゅぷっ」

【孝平】「うっ……出る……!」

びゅくくっ、びゅるるるっ……びゅるっ!

【かなで】「……んっ!」

たまりにたまった精を、かなでさんの口内に放出した。

次から次へと精液が発射し、喉奥を汚していく。

【孝平】「はぁ……あぁ……」

【かなで】「ん、んく……んちゅ……」

かなでさんは、すべてを解き放ったペニスからゆっくりと口を離す。

目をつぶり、そのままゴクンと精液を飲み込んだ。

【かなで】「……ぐっ……んふぅ」

一気に飲みきれなかったのか、口端からとろりと白濁液が漏れる。

自分でもびっくりするほど、出してしまったのだ。

【孝平】「す……すみません」

【孝平】「つい、我慢できなくて」

【かなで】「んん?」

かなでさんはもう一度喉を鳴らしてから、俺を見上げた。

【かなで】「我慢しなくっていいんだってば」

【かなで】「わたしが、出してほしかったんだもん」

恥ずかしそうに言う。

【かなで】「でも、こんなに出ると思わなかったよ」

【かなで】「……さては、めちゃめちゃ興奮してた?」

お姉さんっぽい口調で言われ、素直にうなずいた。

あんなにおいしそうに舐めてくれると思わなかったのだ。

【かなで】「ふふ、いけない子だね、こーへーは」

【孝平】「あっ……!」

一度口から離したペニスに、再びちゅぱちゅぱと吸いつく。

全身にしびれが広がっていく。

【かなで】「んく……まだ出てるみたい」

【孝平】「ぅ……そんなに、刺激を与えたら……っ」

欲望を吐き出したはずの肉棒が、むくむくと頭をもたげていく。

さっきから主導権を握られっぱなしだ。

【かなで】「ちゅぅ、ん……こーへーの、すごいね」

【かなで】「……なんか、さっきよりも大きくなってるみたいだけど?」

かなでさんの頬が上気している。

情欲に潤んだ、とろんとした目。

興奮しているのは、きっとお互い様なのだ。

かなでさんだって俺を欲している。

それを証拠に、さっきからずっと俺のペニスを離さない。

【孝平】「……俺、まだ全部出しきってないみたいです」

【かなで】「え……」

【孝平】「かなでさんの中に、入れたい」

【孝平】「……今すぐに」

俺はその場に座り、かなでさんを抱き上げた。

【孝平】「自分で入れられますか?」

【かなで】「う……ふぅっ」

自分で股間の布地をずらし、亀頭を膣口にあてがう。

俺に背後からまたがる格好なので、恥ずかしい部分がしっかりと見えてしまう。

ところどころに砂のついたお尻が、少しずつ沈んでいく。

【かなで】「こ、こんなところで、誰かに見られたら」

【かなで】「もう、風紀シールどころじゃないよ……っ」

そんなことを言いつつ、ずぶずぶとペニスをくわえ込んでいく。

いつにも増して内部は狭く、俺は軽く身震いをした。

本当に、こんなところ誰かに見られたら大変だ。

だからといって、今やめる気はまったくないが。

【かなで】「あ……入っちゃう……入っちゃうよ、こーへー」

【孝平】「ええ、ちゃんと見えてます」

【かなで】「やん……んっ、ふああああぁっ」

ずぶぶぶっ!

根元まで一気に入り、かなでさんは身体をのけぞらせた。

【かなで】「はぁ……ぁっ、入っちゃった……の?」

【孝平】「はい。こんなに深く」

腰をぐっと上げ、最深部に亀頭を突きつける。

【かなで】「んくあぁっ!」

かなでさんの全身が、ぴんと張りつめた。

【かなで】「あぁ、ぁ、んふぁあぁっ……」

【かなで】「なんで、こんなに気持ちいいの……?」

俺の方を振り返り、かなでさんはつぶやいた。

接合部は愛液でぬるぬるになり、特有の匂いを漂わせている。

【かなで】「こんなに気持ちよくなっちゃっても、いいの?」

【かなで】「どーしよう……こーへー……っ」

ぬちゅっ、ずぷうぅ……ねちゃっ

ゆっくりと味わうようにして、腰を上下に動かす。

ピンクのヒダが綺麗に割れ、ヌチュヌチュと棹部分を刺激していく。

【かなで】「くぁ、あぁ、んふあっ、あぁっ」

【孝平】「かなでさんの声、すっごくかわいいです」

【かなで】「うぅ、んっ、声、出ちゃうの、勝手に……ひあぁぁっ」

最初は控えめだった声が、だんだんと大きくなる。

自分の快感を抑えることができないのだろう。

俺はかなでさんの股間に手を伸ばし、剥き出しになった陰唇を弄った。

【かなで】「あひぁっ、触っちゃ……だめだよっ、そこはぁっ」

膣口周辺が、俺の肉棒によってぱんぱんになっている。

大量の愛液が俺の指を濡らしていく。

【かなで】「んはあぁっ、だめだめ、もっと気持ちよくなっちゃうでしょっ……!」

妖しく腰を動かしながら、かなでさんは声を高らかにあげる。

【孝平】「もっと気持ちよくしてあげたいんです」

【かなで】「これ以上は、だめだよ……っ」

だめなんて言いながら、腰を動かしているのは誰だろう。

【かなで】「うっ……! あくぅ、んっ……!」

どうやら、かなでさんは自分の気持ちいいツボを発見したようだ。

膣壁にペニスをなすりつけるようにして、細かく上下している。

【かなで】「んぁ、やんっ……誰かに聞かれちゃうかも……」

【孝平】「大丈夫ですよ、波の音が消してくれますから」

だから、もっと乱れてほしい。

そんなかなでさんが見たい。

【かなで】「こーへー、お願い」

【かなで】「う……動かしてっ……」

じらすような動きでは、物足りないらしい。

俺はかなでさんの腰をつかみ、勢いよく頂上を目指した。

ずぶうううぅっ……!

【かなで】「くっはあぁぁっ」

勢いに乗ったまま、激しいストロークを続ける。

こすられて気泡を帯びた蜜が、内部から溢れ出した。

【かなで】「はぁん、はぁ、んんあぁっ」

【かなで】「中が、ぐちょぐちょになっちゃってるの……わかる?」

【孝平】「はい……すごく、わかります」

ペニスを包む膣壁が絶え間なく蠢いている。

すぐにでも達してしまいそうな自分を、諫めるので精いっぱいだ。

【かなで】「くぅ、ん……んんっ」

【かなで】「んふうううぁあぁっ」

かなでさんはギリギリまでペニスを引き抜き、一気に腰を沈めた。

脳天まで電流のような刺激が走る。

それは、まずい。

そんなことをされたら、もういい加減抑えられなくなる。

【かなで】「こーへー、ああぁ、はあぁんっ」

【かなで】「わたしたち、一つになってるんだね……っ」

【孝平】「そう……です、うぅ……っ」

かなでさんのグラインドは容赦がない。

ほとんど飛び跳ねるようにして、快感を貪っている。

【かなで】「一つに……あぁ、はふん、んっ、あくんっ」

【かなで】「どうしよ……あぁ、気持ちよくて……あん、もうっ……!」

大きな腰の動きから、今度は小刻みな動きへと変化した。

より締めつけが強くなる。

【かなで】「はぁ、あん、なんか……来るよ……っ」

【かなで】「やんっ、もう……あぅ、来ちゃうってばっ……!」

俺の太腿に指を食い込ませ、髪を振り乱す。

ペニスを搾り上げるようにして、内部が収縮を繰り返している。

【かなで】「あ……あぁ、だめ、もう、あふん、んんっ」

【かなで】「もう、いっちゃうよ……あぁ、ねえ、中に……あぁっ、くはあぁっ」

【孝平】「俺も……かなでさんっ……」

弾みをつけて、性器にペニスを叩きつける。

全身が浮き上がるような感覚を覚えた。

【かなで】「ひああぁん、あぁ、あっ、ふうぁっ、いくぅ……んんっ」

【かなで】「いっぱ、出して……あぁん、あっ……はあぁ、ふううあぁあぁっ!」

【孝平】「いくっ……!」

【かなで】「わたしも……っ、ああぁ、はふん、あぁ、はぁ……んふあぁああぁぁっ……!」

どぴゅぅ! びゅくっ、びゅうううっ……!

【孝平】「うっ……!」

一番奥に先端が到達した瞬間、俺は激しく射精した。

かなでさんの中に、思いっきり精を飛ばしていく。

【かなで】「はああぁっ……ああぁっ」

陰部から、蜜と精液の混ざった汁が流れ出す。

その熱くドロッとした液体は、俺の下腹部から砂の地面へと伝っていった。

【かなで】「んああぁ……いった……ったぁ……」

【かなで】「いっちゃ……ったぁ……」

肉棒をくわえた陰唇が、ピクンピクンといやらしく痙攣していた。

びっしょりと汗をかいた肌が、夕焼け色に染まって綺麗だ。

【かなで】「こーへー、またいっぱい出したんだね」

【かなで】「びゅくびゅくって、奥にあたってたよ」

【孝平】「う……っ」

いたずらっぽい表情でかなでさんは俺を見た。

かなでさんの中があまりにも気持ちよくて、また無茶苦茶な量の精液を出してしまった。

……恥ずかしい。

【かなで】「興奮しちゃった人、手を挙げてください」

【孝平】「はい」

【かなで】「はい」

同時に挙手をした。

【孝平】「なんだ、やっぱりかなでさんも」

【かなで】「しょーがないでしょ? こーへーがいっぱい動かすんだもん」

【孝平】「動かしてって言ったのは、確かかなでさんだったような」

【かなで】「言ってない」

【孝平】「言いました」

【かなで】「言ってな……あっ、んふあぁっ」

ほんの少しだけ腰を動かしただけなのに、かなでさんの肩がビクッと反応する。

どれだけ感じやすくできてるんだ。

【かなで】「あぁ……動かしちゃ、だめなのにっ」

まだ膣内では、断続的な痙攣が続いている。

相変わらず締めつけがすごくて、達したばかりのペニスが再び反応してしまう。

【孝平】「かなでさん……立ってもらえますか?」

【かなで】「……えぇ?」

【かなで】「ま、待ってよ……」

近くの木に手をつかせ、水着をずり下げた。

背後から足を掲げ、ヒクついた秘所に改めて亀頭を密着させる。

【孝平】「待てません」

まるで興奮が収まらない。

熱く充血した陰唇に、ヌチュヌチュと先端をこすりつける。

【かなで】「そ、そんなことしたら、また入っちゃうよ……?」

【孝平】「また、入れたいんです」

【かなで】「えっ……あぁ、待って、あぁっ!」

ズチュウゥ……!

【かなで】「あっ……! やふああぁあぁっ!」

下から、一気に突き上げる。

かなでさんの声が、紫がかった空へと放たれた。

【孝平】「すごい……さっきよりもキツイです」

【かなで】「待ってって、言ったのにぃ……もう、あぁんっ」

【孝平】「待てないって言ったじゃないですか」

ようやくイニシアティブを奪い返した。

背後から乳房に手を回し、存分に揉みまくる。

【かなで】「あぅ、そんなにしたら、あぁ、だめっ」

【かなで】「もっと……興奮しちゃうでしょ……っ?」

浮き出した乳首を強めにつねり、耳元に息を吹きかける。

すると陰部がきゅっきゅと締まり、さらに深く俺自身を飲み込んでいく。

【かなで】「もっと、ゆっくり……じゃないと、あはあぁ、はふあぁっ」

優しくしてあげたいけど、勝手に腰が動いてしまうのだ。

いきなりトップスピードで、子宮口を責め立てていく。

【かなで】「うぅ、んくぅ……あぁ、だめぇ、はふんっ」

【かなで】「こーへー、そんなにたまってたの……?」

【孝平】「かなでさんがいやらしいから、欲しくなるんです」

【孝平】「責任、取ってください」

【かなで】「そんなっ……」

【かなで】「もう、これ以上気持ちよくなるの、怖いよ」

【かなで】「きりがなくなっちゃう……っ」

腰に角度をつけて、出し入れしやすいように調節してくる。

かなでさんだって、欲しくて欲しくてたまらないのだ。

俺は陰部に手を伸ばし、陰唇を開いてクリトリスを剥き出しにした。

【かなで】「ひんっ、あぁ、風が……あたって……ああぁっ」

【かなで】「もう、立ってられないよ、足が震えちゃう」

【孝平】「俺が支えてるから大丈夫です」

耳たぶを口に含み、甘噛みする。

かなでさんはくすぐったそうに身をよじらせ、荒い息を吐く。

首筋や肩に舌を這わせると、潮の味がした。

【かなで】「こーへー、キスして」

【かなで】「ちゃんと、抱きしめてて……」

かなでさんは切なそうな顔をこちらに向けた。

その口元にむしゃぶりつき、お互いの唾液を交換する。

【かなで】「んく、ん、ちゅ……はぁむ、んっ」

口内のあらゆるところまで舌を伸ばし、吸いつき、舐め上げた。

再び下腹部に熱がたまっていくのがわかる。

【かなで】「あむ……ちゅぅ、んくぁっ」

【かなで】「こーへーとキスするの、大好きだよ」

【かなで】「すごく幸せで、やらしい気分になる……」

恥じらいながら、そんなことを言う。

【孝平】「俺も、かなでさんとキスするの好きですよ」

【孝平】「毎日でもしたいくらい」

じゅぷっ、ずじゅっ、ぬぷううっ……

キスを繰り返しながら、膣道をペニスでひたすらこする。

だんだんと周囲が暗くなり、薄闇が俺たちを包んでいた。

二人の吐息と波の音だけが聞こえている。

【かなで】「んぁ、あっ、気持ちいい、あぁ、はあぁん」

【かなで】「こーへーも、もっと気持ちよくなってね」

【かなで】「わたしのあそこで……もっと、気持ちよく……なってっ……」

哀願するようにつぶやいた。

俺は膝を軽く曲げ、さらに反動をつけて陰部を貫く。

硬く膨れあがったペニスは、まるで衰えることなくかなでさんの奥を目指した。

【かなで】「ひああぁ、んっ、あぁっ、はああぁっ、あっ」

【かなで】「こーへー、好きだよ……ああぁ、はんっ、ふああぁっ」

脚を高く掲げさせ、猛り狂った肉棒をねじ込む。

かなでさんの内腿はびっしょりと汗をかき、震えていた。

【かなで】「こーへー、また、一緒に、いきたい……っ」

【かなで】「いかせて……くれる?」

甘い声で囁かれ、俺はうなずいた。

残った力を使って、じゅぶじゅぶと腰を上下させる。

快感の大波がしだいに迫ってくるのがわかった。

【かなで】「はぁ、んぁ、はああぁ、あふぁ、んっ……んぁっ」

俺の動きに応えるようにして、膣道がうねる。

苦悶に顔を歪ませながら、かなでさんは腰を揺り動かした。

【かなで】「んぁ、すご……い、あぁ、いきそうに、なってる……あぁっ」

【かなで】「もう、すぐに……あぁ、いっちゃいそう……だよっ」

内部のざわめきが激しくなった。

俺も、かなりやばい状態だ。

深く息を吐き、かなでさんの身体をぎゅっと抱きしめる。

【かなで】「あひぁ、ああぁ、ひんっ、はぁ、あああぁ」

【かなで】「やあぁ、もう……あっ、来ちゃうよ……あああぁっ、くはぁ」

俺の膝から上が激しく震えた。

絶頂がそこに見える。

やみくもにペニスを突きつけていく。

【かなで】「いく、あひあああぁつ、あぁ、やんっ、はぁ、ああぁ」

【かなで】「一緒に……いきたいのっ……ああぁ、あっ、ひゃあぁああぁっ」

【孝平】「あっ……あぁ……っ」

お腹の中心がぐっと重くなる。

もう限界だった。

【孝平】「う……いくっ……!」

【かなで】「ひああぁ、あぁ、いくよ……ああぁ、一緒に、ああぁっ」

【かなで】「んはぁ、ああぁ、はふあああぁっ、いっちゃううぅ、あああふあああぁっ!」

ずぴゅううう! どくっ! びゅくううう!

かなでさんが達した瞬間、俺はペニスを引き抜いて射精した。

その全身に、大量の白濁液がかかっていく。

【孝平】「くっはぁ……はぁ、あぁ……」

【かなで】「はぁん、はあぁ……はぁ……」

快感に身を震わせているかなでさんは、がっくりと木にもたれかかった。

目の焦点が合っていない。

短く息を吐きながら、全身をビクビク震わせている。

【かなで】「うぅ……また……」

【かなで】「またいっちゃった……っ」

【孝平】「嫌でしたか?」

【かなで】「そ、そうじゃないの」

【かなで】「そうじゃなくて……もう、こーへーが悪い」

【かなで】「こーへーがわたしをこんな風にしたんだからね?」

俺のせいだったのか。

かなでさんが感じやすいせいもあると思うが。

【かなで】「はぁ……」

【かなで】「こーへーも、またたくさん出したね」

なぜか嬉しそうに言う。

【孝平】「かなでさんがえっちだからです」

【かなで】「あ、人のせいにした」

【孝平】「それはお互い様」

【かなで】「むー」

【孝平】「身体、べたべたになっちゃいましたね」

【かなで】「ふふ。いーのいーの。好きなだけべたべたにしちゃって」

【かなで】「それにしても、こーへーは底なしだなあ」

【孝平】「……」

かなでさんも、とは言わないでおく。

【かなで】「ねえこーへー、もう一回泳ごうか?」

【孝平】「え、もう暗いですよ?」

辺りはいつの間にか、夜になろうとしていた。

誰もいないビーチに、波が打ち寄せては引いていく。

【かなで】「大丈夫だよ。ねっ?」

……。

//H-scene ends//

やがてかなでさんは、水着をつけ直して波打ち際へと歩いていった。

砂浜に小さな足跡が続く。

その無邪気な後ろ姿を、しばし眺める。

【かなで】「こーへー! 早くー!」

【孝平】「はーい」

かなでさんは、俺に大きく手を振った。

沈みゆく太陽と、頭上を横切る雲。

旋回する白い鳥。

夏の終わりを予感させる風が、かなでさんの髪をなびかせていた。